本研究では、イオン環境が鍵となる生命現象の基盤の解明のために、非侵襲な光で活性が制御される光感受性イオンチャネルを創製し、細胞機能を操作する系を確立することを目的とした。 [最終年度に実施した研究の成果] 1. 候補となる青色光感受性キメラチャネル変異体を大腸菌で発現・精製し、脂質平面膜法により電気生理学的に活性を調べた。その結果、これまでに酵母を用いた増殖能実験で常に高い活性を示していた変異体は、青色光照射の有無にかかわらず常に高い開確率を示すことがわかった。増殖能実験で光感受性を示した変異体は、今回検討した光照射条件では光依存的なチャネル電流の変化は見られなかった。青色光の強度や照射時間などを検討する必要がある。 2. HEK細胞に候補となる光感受性イオンチャネル変異体を発現させ、光照射に依存したイオン環境の変化を捉えるための系を立ち上げた。変異体遺伝子をHEK細胞へリポフェクション法で導入し、変異体の発現をタグとして付加した蛍光タンパク質の蛍光で確認した。また、パッチクランプ法によりHEK細胞のイオン電流を測定することができた。 [研究期間全体を通じて実施した研究の成果] 様々な長さのKcsAチャネルに、光感受性ドメイン(LOV)または様々な長さの光感受性蛋白質(PAC)を付加した変異体の遺伝子ライブラリーを約100種類作製した。これらをK+輸送欠損大腸菌を用いて光刺激の有無でK+輸送能が異なる変異体をスクリーニングし、最終的に青色光照射下で増殖能が高い変異体が6種類得られた。そのうちの1種類の詳細な活性を電気生理学的手法で調べたが、検討した光強度・照射時間では光依存的な活性の変化は見られなかった。また、細胞の活性の光制御のため、作製した変異体をHEK細胞に導入し、パッチクランプ法により活性を測定する系を確立した。
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