研究課題/領域番号 |
15K07039
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
大林 典彦 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (40421979)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Rab / ユビキチン / 蛋白質分解 / メラニン合成酵素 / メラノソーム / オルガネラ / 低分子量G蛋白質 |
研究実績の概要 |
VPS9-ankyrin-repeat protein (Varp)は、活性化型Rab32/Rab38と結合するエフェクター分子として機能し、メラニン合成酵素のメラノソームへの輸送を制御する。Varpには、2つのアンキリンリピートドメインが存在し、N末側のANKR1がRab32/Rab38との結合に重要な役割を果たす。しかしながら、C末側のANKR2の機能は不明であった。VarpのANKR1とANKR2は、比較的アミノ酸配列の相同性が高いことから、ANKR2はANKR1とは別のRabと結合するのではないかと予想された。そこで、VarpのANKR2と60個にも及ぶ各Rabアイソフォームとの結合を検討したところ、新たにVarp-ANKR2が活性化型Rab40サブファミリー分子(Rab40A/Rab40B/Rab40C)と結合することを見出した。 Rab40サブファミリー分子は、suppressor of cytokine signaling (SOCS)ボックスをもつユニークなRabで、Cullin-5との結合を介してユビキチンリガーゼ複合体と結合する。本研究では、メラノサイトに特異的に発現するRab40CがVarpと結合することによりVarpの分解を制御するのではないか、との仮説をたて、それを実証するためにRab40C過剰発現メラノサイトにおけるVarpの発現レベルを細胞生物学的・分子生化学的手法により検討した。その結果、Rab40C発現によりVarpのmRNAレベルには変動が認められないものの、Varpタンパク質の発現量が顕著に低下することを見出した。また、SOCSボックスを欠失した変異型Rab40Cを発現させたメラノサイトでは、このようなVarpの減少は認められなかった。さらに、VarpをRab40Cと共に細胞に発現させると、Varpのポリユビキチン化が亢進し、逆にRab40CをノックダウンするとVarpの発現量が顕著に増加することを見出した。これらの結果は、VarpがRab40C依存的にユビキチン化を受け、分解を受けることを意味している。さらに検証を続けた結果、Rab40CはVarpの発現量を減少させることにより、メラニン合成酵素の輸送を抑制することも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VarpとRab40Cの結合がVarpの発現量を顕著に減少させることを、多面的なアプローチから証明することに成功した。さらに、VarpとRab40Cの結合がメラノサイトに対してどのような意味をもっているのかについてアプローチしたところ、Rab40C依存的なVarpの発現量減少がメラニン合成酵素輸送の阻害に結び付くとの結果を得た。以上の結果より、本研究課題は順調に進展しているものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り研究計画を推進し、Rab40CによるVarpの分解機構の詳細な役割を明らかにする。さらに、Varpの発現量維持はメラニン合成酵素輸送に非常に重要であるため、Varpの発現量を維持する分子機構の存在が示唆される。 そこで、VarpのANKR2に対するさらなる結合因子を同定し、本研究で明らかにしているRab40C依存的なVarp分解機構と、何らかのレベルで拮抗するような因子の同定や分子機構の発見を新たな研究課題として設定したい。
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