本研究は、Greatwallキナーゼ(Gwl) によるM期進行制御の分子標的の解明を目指し、ケミカルジェネティクス法を用いて同定した 15 個の Gwl のリン酸化基質候補の中で、特に染色体との相互作用が示唆される 1 つの候補タンパク質に着目して解析を行った。前年度までに、基質候補の遺伝子をクローニングし、in vitroでGwlの基質となることやそのリン酸化部位を2カ所同定していた。また、この基質候補の断片タンパク質を細胞に微小注射すると、M期進行に異常がみられたことから、GreatwallのM期進行制御の分子標的の可能性が高いと考えた。 平成30年度は、Greatwallによる2カ所のリン酸化部位に対して作成した抗リン酸化抗体を用いて、in vivoでGwl依存的にリン酸化が起きるかを明らかにすること、ならびに、このリン酸化がM期進行制御にいかなる役割を持つかを明らかにすることを目指した。作成した抗体により基質候補がin vivoでM期にリン酸化されることが確認できた。しかし、Gwlに依存しているかは、Gwl活性の阻害に用いた活性中和抗体や、Gwlが局在する細胞核を除去する方法を試したが、持ち込みの中和抗体や検出感度が低い問題により、本年度中に依存性を示すまでに至らなかった。M期進行制御への役割は、Gwlによるリン酸化を受けない変異体mRNAの全長の発現では量が少なく影響が見られなかったが、断片では染色体分離異常が見られた。また、初年度に見出したCdk1によるリン酸化については、リン酸化部位の候補を複数箇所見いだし、Cdk1とGwlとの2つのキナーゼの連携や役割の解析準備が進んだ。
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