研究実績の概要 |
細胞膜においては、PI4P-PI(4,5)P2-PI(3,4,5)P3の一連の代謝が、イノシトールリン脂質酵素群の働きにより厳密に制御されている。特にPI(4,5)P2及びPI(3,4,5)P3は、シグナル伝達やエンドサイトーシス等に必須の役割を担うことから、様々な知見が得られている。しかし一方で、その前駆体であるPI4Pについては、PI(4,5)P2と同様に重要であるにもかかわらず、不明な点が実に多い。そこで、このPI4P産生を担うPhosphatidylinositol 4-kinase IIIα (PI4KIIIα)に着目し、今年度は、そのPI4KIIIα複合体の形成および局在が神経細胞等においてどのように制御されているかを、生化学的および形態学的手法により解析を行った。神経芽腫細胞株Neuro2aにGFP-PI4KIIIα、およびその複合体構成分子群(EFR3A/B、TTC7A/BおよびTMEM150A)を発現させ、その局在を調べたところ、GFP-PI4KIIIα単独を発現させた場合には細胞質に分散して局在したが、EFR3AおよびTTC7Bを共発現させると細胞膜に局在した。このことから、神経様細胞株においても、PI4KIIIαの細胞膜への局在は、その複合体構成分子群であるEFR3およびTTC7に依存していることが明らかとなった。さらに、最近新たなPI4KIIIα複合体分子群の1つとして同定したTMEM150Aは、やはり細胞膜に局在したが、単独ではPI4KIIIαを細胞膜へ局在させることはできなかった。これらの結果から、神経様培養細胞においては、PI4KIIIαの局在は、主要構成分子群であるEFR3およびTTC7によって制御されており、TMEM150Aはその補助的役割を担っている可能性が高いことが示唆された。尚、生化学的解析において、TMEM150Aは膜タンパク質であるため精製が困難であり、今後は従来の計画通り、動物細胞を用いた免疫沈降法により粗精製を行い、さらなる解析を行う予定である。
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