研究課題/領域番号 |
15K07045
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山城 佐和子 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (00624347)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | メカノセンシング / 一分子イメージング / アクチン / ミオシン / 接着斑 |
研究実績の概要 |
組織形成において、細胞集団は個々の細胞の発生する力により協調した形態形成を遂行する。細胞はどのように細胞内力を隣接する細胞や基質に伝達し、細胞-細胞間または細胞-基質間で内力を調節し、協調した形態形成を遂行するのか?アクチン細胞骨格は、ミオシンによる収縮力とアクチン重合により物理的な力を発生する。組織形成において単一細胞の内力は、接着分子を介して細胞外環境と相互作用しながら時空間的にダイナミックに変化し、協調した形態形成の駆動力となる。外部環境との接点など、微小空間における力の働きを知ることは、組織形成機構の解明に重要であるが、実体のない力を非侵襲に高解像度で捉える技術は確立しておらず、不明な点が多く残されていた。 本研究では、力の作用する分子群を単分子レベルで直接“見る”ことで力の作用を捉えるアプローチを提案した。細胞内力の動態をリアルタイムで詳細に捉えることを目的として、作用点分子の挙動を単分子スペックル顕微鏡法により可視化解析した。本研究の主な研究成果は、以下の2点である。(1) ミオシン依存的な張力がアクチン線維を安定化することを、細胞内において最高精度の時空間分解能で明らかにした(論文投稿中)。(2) アクチン繊維流動と、接着斑分子を介した細胞外基質 (ECM) との連結を分子レベルで可視化解明した。細胞仮足はこれまで、移動する細胞を進行方向に伸展させる舵取り装置であると考えられている。本研究では、細胞仮足内のアクチン繊維流動がECMを変形させる新規の役割を持つ可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、研究計画に挙げていたミオシン活性によるアクチン繊維代謝調節機構の可視化解明を行った。改良型単分子スペックル法を用いて、ミオシンII阻害剤blebbistatinのアクチン繊維安定性への影響を明らかにするためアクチン繊維寿命解析を行った結果、魚類ケラトサイトの葉状仮足(ラメリポディア)とXTC細胞のラメラ領域において、ミオシン不活性化によりアクチン繊維寿命が短縮したことから、ミオシン活性はこれらの細胞内構造においてアクチン繊維を安定化することを明らかにした。 さらに、これらの研究を進める過程で、ライブイメージングに用いられる蛍光アクチンプローブのライフアクトとファロイジンが細胞内で局在ミスをすることを発見した。これらのアクチン繊維結合型の蛍光プローブの局在ミスを数理モデル化した。アクチンプローブの生化学的性質と、単分子スペックル解析で明らかにした細胞内アクチンダイナミクスをパラメータに用いてシミュレーション解析を行い、アクチンプローブの生細胞内での局在ミスを再現することができた。蛍光ライフアクトは、アクチン細胞骨格のライブイメージングに細胞生物学の分野で広く用いられており、本研究ではインパクトのある知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要に示した (1) ミオシン依存的な張力がアクチン線維を安定化することを、細胞内において最高精度の時空間分解能で明らかにした成果と、蛍光アクチンプローブの局在ミスの分子機構について、現在論文を投稿準備中である。 (2) アクチン繊維流動と、接着斑分子を介した細胞外基質 (ECM) との連結を分子レベルで可視化解明した成果については、さらに補足的な実験を行う。具体的には、アクチン繊維流動と接着分子インテグリンを連結する候補分子であるタリンについてRNA干渉による遺伝子ノックダウンを行った細胞内でアクチン及び接着分子の単分子スペックル解析を行う。これらの可視化解析よりアクチン繊維流動力を細胞外基質に伝えるメカニズムが分子レベルで明らかにすることができる。補足的実験が完了次第、論文を作成・投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は論文作成、投稿を行ったが受理されなかった。そのため、さらにデータを加えて論文を作成し直し、再投稿の準備を進めている。実験遂行と並行して論文作成を行っていたため物品費の支出が見込みより少なく、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に必要な物品を引き続き購入する。論文が受理された場合、出版費用を支払う。また、研究成果を国内外の学会で発表する。
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