研究実績の概要 |
多細胞生物の体を構成する細胞の多くは極性を持っている。このような細胞構造を作成し維持するためには膜タンパク質を選別して適切な細胞膜ドメイン(極)へと送る輸送(極性輸送)が必要だが、その分子機構はよく分かっていない。側底面膜への極性輸送については哺乳類上皮細胞を用いた解析からAP1, クラスリンが関与することが明らかとなった。私達はショウジョウバエで唯一のAP1 の欠損変異細胞の解析により、視細胞における側底面膜への極性輸送にAP1が必須であることを示していた(Satoh et al, 2013)。その後私達は、ショウジョウバエ視細胞を用いた極性輸送の解析によりRab10GEF, Cragが側底面への極性輸送に必要である可能性を示す結果を得、本研究を着想していた。 初年度は、Crag の変異体の詳細な解析を行い、Crag 表現型を詳細に解析した。その結果、Crag欠損変異体では、側底面膜へのNaKATPase の輸送が欠損し、発生過程では頂端面への誤った輸送がおこること、成虫では著しくNaKATPase が減少することを示した。 Crag はショウジョウバエ視細胞では光依存的なロドプシン輸送に関わると報告されている。そこで本年度は、発表論文と我々の研究結果の相違について研究した。私達は、Crag欠損変異体では、NaKATPase が減少することから、NaKATPase の欠損がロドプシン輸送へもたらす影響について、NaKATPase のRNAi を行なうことで検討した。その結果、NaKATPase の欠損がロドプシン輸送の欠損をもたらすることがわかり、Crag 欠損における光依存的なロドプシン輸送欠損は間接的なものであることが示された。
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