研究実績の概要 |
多細胞生物の体を構成する細胞の多くは極性を持っている。このような細胞構造を作成し維持するためには膜タンパク質を選別して適切な細胞膜ドメイン(極)へと送る輸送(極性輸送)が必要だが、その分子機構はよく分かっていない。側底面膜への極性輸送については哺乳類上皮細胞を用いた解析からAP1, クラスリンが関与することが明らかとなった。昨年までの本研究において、ショウジョウバエ視細胞におけるCrag 欠損により、本来側底面に特異的に局在するNa+K+ATPase が、誤ってストーク膜にも局在すること、側底面膜のNa+K+ATPase の染色強度が減少することを見出していた。本年度は、Crag のみならず、Rab10, Ehbp1 さらに、AP1, クラスリンについて同様の表現型が得られることを示した。さらに、側底面膜やストーク膜を定量化し、Crag, Rab10, Ehbp1 欠損変異視細胞では、野生型視細胞と比較して、側底面膜は約0.7倍に減少し、ストーク膜は約1.5倍に増加することを示した。さらに、昨年度までに作成していたタグ付きCrag, Rab10を発現するトランスジェニックバエや、ストックセンターから取り寄せたAP1YFP 発現バエ、分与していただいたEhbp1, Chc抗体を用いて、これらのタンパク質の詳細な局在解析を行なった。その結果、これらのタンパク質がトランスゴルジ網(TGN)において共局在することを見出した。これらの結果から、Crag, Rab10, Ehbp1 がAP1,クラスリンと共に、TGNから側底面膜へと輸送されるポストゴルジ小胞の出芽に必要だと考えられた。
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