研究課題/領域番号 |
15K07054
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
菊池 浩二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (70457290)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Wnt/PCPシグナル経路 / 微小管ダイナミクス / 微小管結合蛋白質 / Dishevelled / ゲノム編集 / 前後極性 / 平面内細胞極性 / 上皮組織 |
研究実績の概要 |
Wntシグナル経路のひとつであるWnt/平面内細胞極性(planar cell polarity:PCP)シグナル経路は、細胞運動時に観察される前後極性や上皮組織における上皮細胞の配向パターン(PCP)を制御することで、器官形成に関与する。Wnt/PCPシグナル経路は、細胞骨格のダイナミクスと相互的に協調して機能すると考えられているが、その詳細は明らかでない。 私共は、前年度までに、微小管結合蛋白質であるMap7とMap7D1(以降、Map7/7D1)がWnt/PCPシグナル経路の構成因子であるDishevelledと結合し、局在化を制御することで、Wnt/PCPシグナルをエフェクター分子に伝達し、細胞骨格のダイナミクスを制御する可能性を見出した。本年度はノックイン細胞、ノックインハエを用いた解析に加え、マウス・卵管上皮を用いた解析にまで研究を発展させて、以下の知見を得た。1)ノックイン細胞を用いたFRAP解析から、Map7の微小管プラス端方向への移動はキネシン依存性であり、また、Wnt/PCPシグナルによる制御を受けることが明らかになった。2)Map7の動態に関与するキネシンのノックダウンによりDvlの細胞表層への集積が消失した。従って、Map7/7D1-キネシンによりDvlが輸送される可能性が示唆された。3)ショウジョウバエ蛹・翅を用いたモザイク解析により、PCPの形成過程において、EnsがDishevelledの局在制御に関与することが明らかになった。4)ノックインハエを用いたライブイメージング、及び、マウス・卵管上皮を用いた免疫染色により、Ens、及び、Map7/7D1が、微小管マイナス端が集積するとされる近位・卵巣側に偏在化して局在することが明らかになり、PCP形成過程におけるMap7/7D1とEnsの機能が生物種を超えて保存されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熊本地震の影響により、上半期の予定については大幅な変更を余儀なくされた。しかし、共同研究先と連携して、解析対象を培養細胞株から個体レベル(上皮組織)へとシフトしたことで、私共が培養細胞を用いた解析で明らかにした分子メカニズムが上皮組織におけるPCPの形成過程においても重要である可能性が示唆された。本研究成果の一部は、現在、論文投稿の準備中である。 前年度に本研究から派生して、Map7と同じファミリーに属するMap7D2が神経突起の進展を抑制する因子である可能性を見出した。本年度の研究計画では、Cdk5によるMap7D2のリン酸化部位の同定と非リン酸化型及び疑似リン酸化型変異Map7D2の機能解析までを予定していたが、熊本地震により質量分析装置(熊大・発生研所有)が転倒・故障したため、研究計画が遅延した。しかし、復旧の後に、Cdk5によるリン酸化部位をすべて同定することができ、非リン酸化型及び疑似リン酸化型変異Map7D2の作製まで終了したため、現在、機能解析を実施している。
本研究成果の一部については、第68回日本細胞生物学会大会、第39回日本分子生物学会年会等にて学会発表を行った(学会発表の項参照)。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの進捗状況を踏まえ、以下の研究を実施する予定である。 (1)PCPを形成する上皮細胞におけるMap7/7D1の動態は明らかでない。そこで、マウス・卵管上皮を用いた器官培養下でのライブイメージングにより、Map7-EGFPおよびMap7D1-EGFPの動態を明らかにする。 (2)Map7/7D1/Ensの局在性がPCPを形成する上皮細胞において保存されていたため、PCPにおける機能についても保存されている可能性が考えられるが、これまでにMap7もしくはMap7D1に関してマウスの個体レベルにおけるPCPの解析は行われていない。そこで、ノックアウトマウスを用いたPCPの表現型解析を実施する。 (3)質量分析装置によりCdk5によるMap7D2のリン酸化部位を同定した。そこで、非リン酸化型及び疑似リン酸化型変異Map7D2の機能解析を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の進行にあたって、当該年度の予算は概ね執行しており(執行率:98.7%)、繰越額は次年度の予算と合算の上、物品費に充てる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究では下記に示す消耗品が大量に必要となるため、繰越額は次年度の予算と合算の上、物品費に充てる。 ①哺乳類動物細胞を培養する際に使用する大量の牛胎児血清や培地、培養用器具、②タンパク質の発現やsiRNAによるノックダウンに使用するトランスフェクション用試薬、③ウエスタンブロットや免疫染色法といった生化学的及び細胞生物学的手法に必須である、抗体等、④siRNA等の核酸合成受託サービスの費用
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