研究目的:神経細胞はその形態上、細胞体、軸索、樹状突起の3つの異なる領域からなる。軸索は、比較的長い通常1本の神経突起からなり、出力を担う。樹状突起は、比較的短いが分岐を伴う多くの神経突起からなり、入力を担う。軸索と樹状突起は、その領域の違いのみならず、細胞内分子輸送において高度に選択性を持つ。例えば、軸索には、出力を担うためのプレシナプス構成分子、神経伝達分子などが選択的に輸送される。一方、樹状突起には、入力を担うポストシナプス構成分子、神経伝達分子受容体などが選択的に輸送される。これらの分子は神経細胞の機能上、重要な役割を担うことから、軸索、樹状突起への選択的な分子輸送は、神経細胞の機能上極めて重要であると言える。これらの分子輸送は、神経細胞体にあるゴルジ体からの物流(選択的小胞輸送)機構により制御されることが知られるが、その分子機構はほとんど明らかとなっていない。 最終年度及び研究期間全体において:線虫C. elegansにおいて、UNC-33/CRMP2は軸索と樹状突起の極性形成において重要な役割を演じていることが知られている。UNC-33は軸索に選択的に輸送されるが、その分子機構は知られていなかった。私は、unc-51、unc-14変異体において、UNC-33/CRMP2が樹状突起にも輸送されること、unc-51、unc-14、unc-33遺伝子間に遺伝的な相互作用があることを見出した。これらの知見は、UNC-51(進化的に保存されたセリン/スレオニンキナーゼ)、UNC-14(RUNドメインを含むタンパク質)が、UNC-33の軸索特異的な輸送に重要であることを示唆する。
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