研究課題/領域番号 |
15K07057
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中村 太郎 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (30291082)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ADAM / 酵母 / 胞子 / 細胞膜 / 細胞壁 |
研究実績の概要 |
ADAM (A disintegrin and metalloprotease)は真核生物で保存されたマトリックス型プロテアーゼで、高等生物ではさまざまな高次生命現象に関わっている。分裂酵母Schizosaccharomyces pombeはMde10というADAMを持つ最も下等な生物であり、胞子の表層構築(凸凹構造の形成)に関わっている。本研究はS. pombeのADAM Mde10がどのように胞子表層構築を制御するか、その分子メカニズムを明らかにすることを目的とする。 平成29年度は、分裂酵母の胞子の表層を覆うIsp3タンパク質の機能解析をすることにより、表層構築のメカニズムの構築に迫った。Isp3は脂質修飾(パルミトイル化)されることが知られているが、そのターゲットのアミノ酸を同定し、さらにその修飾がIsp3タンパク質の細胞表層への局在に重要なことが明らかとなった。 また、表面の凸凹構造に欠損がみられる変異株のスクリーニングをおこなった。現在までmeu5遺伝子の欠損株で胞子の凸凹構造がみられないことを電子顕微鏡を解析により、明らかにした。Meu5は約80のターゲット遺伝子のmRNAに結合し、その安定化に関わると思われる。mde10もそのターゲットの1つであるため、上記のような形質がでたものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Isp3タンパク質の胞子表層への局在に必要な遺伝子を取得するために、胞子形成時に発現が増えるmeuおよびmug遺伝子群の破壊株約100株にIsp3-GFPを導入し、その局在を観察した。その結果、Meu5, Mug91, Mug148の3つの遺伝子の破壊株ではIsp3が胞子表層にみられなかった。Mug91, 148はパルミトイル転移酵素の調節、触媒サブユニットをコードしている。また、Isp3はパルミトイル化されていることが過去の研究でわかっている。Isp3のパルミトイル化される部位を決定するために、パルミトイル化のターゲットであるシステインをセリンに置換した変異株を構築した。その結果 、Isp3の7番目のシステイン残基に変異を導入したものでは パルミトイル化が検出されないこと、局在に異常が出ることを明らかにした。 以上のことから、 Isp3の7番目システインがパルミトイル化を受け、層構築に重要な役割果たすことが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
Mde10の機能解析についてはほぼ解析は終了しているので、ADAMファミリータンパク質の新たな機能発現のメカニズムとして国際誌に論文投稿の予定である。 Isp3のパルミトイル化と胞子表層への局在のメカニズムについても論文を準備中である。 胞子表層の凸凹構造構築のメカニズムについては、まだ一部のスクリーニングのみなので、非必須遺伝子破壊株セットでのスクリーニングを行い、ゲノムワイドで候補遺伝子を絞り込む。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文にまとめるためのデータの質を上げるために実験をやりなおす必要がある。また、論文投稿に関わり、英文校閲、リバイス実験、投稿料等に用いる予定である。
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