研究課題/領域番号 |
15K07059
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
吉田 健一 明治大学, 農学部, 専任教授 (20345036)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オートファジー / 発現制御 / DNAメチル化 / ヒストンアセチル化 |
研究実績の概要 |
本研究では、オートファジー関連遺伝子(以下、ATG遺伝子)の発現制御機構の解明を目指した。まず、小胞体ストレス応答に関わる転写因子の中でもアポトーシス誘導能を有することが知られているCHOPにより、ULK1およびULK2遺伝子プロモーターがいかなる発現制御を受けるか、ルシフェラーゼ・レポーターの活性を指標として、HeLa細胞で解析した。結果、ULK1では13 bp、ULK2では53 bpにまでCHOP応答配列を限局化することに成功した。 次いで、MAP1LC3遺伝子ファミリー(MAP1LC3A、MAP1LC3BおよびMAP1LC3C)のエピジェネティックな発現制御機構の解明に取り組んだ。まず、HeLa細胞へ5-Aza-2’-deoxycytidine(以下5-aza-CdR)を投与し、定量的リアルタイムRT-PCR を実施した。結果、MAP1LC3C mRNAは経時的な発現増加を示した。次いで、バイサルファイトシーケンシングにより、HeLa細胞におけるCpG配列シトシンのメチル化を確認した。結果、MAP1LC3C遺伝子の転写開始点を+1とした際、-592から-388 bp領域内の7ヶ所のメチル化率は89.9%であり、+423から+785 bp領域内の13ヶ所のメチル化率は35.9%だった。一方、5-aza-CdR投与したCa Ski細胞では、MAP1LC3CよりMAP1LC3A mRNA量がより顕著に増加したので、MAP1LC3A遺伝子のメチル化状態をCa Ski細胞で解析した。バイサルファイトシーケンシングの結果、-419から+14の領域におけるCpG配列シトシンのメチル化率は約99%であった。 最後に、DNAメチル化に加え、ヒストンアセチル化の影響も解析した。まず、5-aza-CdRとヒストン脱アセチル化酵素阻害剤をHeLa細胞に連続投与しMAP1LC3C mRNAを検出した。結果、SplitomicinはトリコスタチンA同様、約10倍程度、MS-275は約80倍MAP1LC3C mRNAを増加させた。さらにMS-275投与の結果、経時的なパンクタ数の増加を確認し、ウェスタンブロッティングによる解析では、MAP1LC3タンパクのフォームⅠおよびⅡの増加を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトATG遺伝子の多くがCHOPによる転写制御を受ける可能性が得られ、特に小胞体ストレス下でのオートファジー誘導の分子機構の一端として、CHOPによるULK1およびULK2の転写制御の可能性が得られた。また、HeLa細胞において、MAP1LC3C遺伝子はDNAメチル化に加えヒストン脱アセチル化によるエピジェネティックな発現抑制下にある可能性が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果を受け、MAP1LC3遺伝子の発現制御に関わる領域を詳細に解析する。具体的には、CpG配列シトシンにメチル基を導入し、ルシフェラーゼ・レポーター活性を指標としてDNAメチル化がMAP1LC3遺伝子の発現に及ぼす影響を解析する。また、MAP1LC3遺伝子ファミリーのエピジェネティックな発現制御をHeLa細胞などのヒト子宮頸がん細胞株に加えて、複数のがん細胞株で網羅的に解析する。具体的には、定量的リアルタイムRT-PCRでmRNAの発現変化を解析すると同時に、ウェスタンブロッティングでタンパクの検出も試みる。以上より、MAP1LC3遺伝子ファミリーのエピジェネティックな発現制御とオートファジーとの関係、ならびにがん発症との関係解明を目指す。
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