研究課題/領域番号 |
15K07061
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
山口 利男 新潟薬科大学, 薬学部, 助教 (50434452)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞分裂 / 細菌 / ストレス耐性 / アルカリ耐性 |
研究実績の概要 |
細菌のアルカリ耐性は、これまで細胞内pHやH+駆動力の維持機構を中心に議論されて来たが、他の観点からのアプローチは少なかった。一方で、我々は独自の検討により、大腸菌のアルカリ耐性にH+輸送とは無関係の蛋白質が複数関与することを見出している。その過程で、これまで機能不明であったDedDが、アルカリ条件下における細胞分裂の維持に必須の機構を担うことを示唆する知見を得た。本年度は、この未知の機構に関する手掛りを得るべく、dedD破壊株の表現型の詳細な解析を行った。 dedD破壊株をpH 7.0~9.0の条件下で振盪培養し、経時的に観察した結果、同株の分裂異常がpH 7.5以上で生じること、かつpH依存的に憎悪することを見出した。加えて、pH 7.5~8.5における分裂異常は一過性であり、対数増殖期を過ぎると分裂が再開することも明らかとした。なお、pH 9.0では分裂の再開は認められなかった。また、dedD破壊株をDAPI染色後蛍光顕微鏡で観察した結果、分裂異常が生じた細胞においても核様体の分離に異常は認められなかった。以上の知見より、DedDの機能がアルカリの程度および増殖期により異なる可能性、および核様体の分離とは無関係である可能性が示唆された。さらに、上述の表現型はsulAもしくはslmAとdedDの二重破壊株でも観察されたことから、dedD破壊株の細胞分裂異常がSOS応答および核様体閉鎖とは別の機構によることが示唆された。 上記と並行して、既知のdivisome関連蛋白質の局在におけるDedDの役割について、mCherry融合蛋白質(FtsZ-mCherryおよびmCherry-FtsN)を作成して検討を開始した。ただし、いずれの融合蛋白質も過剰発現によりdedD破壊株の表現型に影響を及ぼすことが示されたため、現在コンストラクトの再構築を含め、発現条件の検討を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のFtsZおよびFtsNとmCherryとの融合蛋白質について発現条件の検討が遅れている一方で、平成28年度に予定していたdedDのdeletion cloneの解析に既に着手しており、全体として進捗状況に遅れは無いと判断している。また、DedDと相互作用するタンパク質の探索をBacterial Two Hybrid法(BACTH法)により行う準備も進めており、divisomeタンパク質の解析が頓挫した場合でも研究の遂行に影響が生じないよう配慮している。
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今後の研究の推進方策 |
上述のFtsZ-mCherryおよびmCherry-FtsNのdedD破壊株における発現条件の検討を継続し、DedDのdivisome形成の関与の有無を明らかとする。またDedDと相互作用する蛋白質について、BACTH法を用いた探索を開始する。 また、平成27年度に開始したdedDのdeletion cloneの作成と機能解析を継続し、DedDのアルカリ条件下における機能、分裂面への局在、および他の蛋白質との相互作用に必須のアミノ酸領域の特定を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請書作成当時は落射照明装置一式を購入する予定であったが、平成27年度に入ってから、学内で不要となった蛍光顕微鏡を入手できることとなり、これにより支出が大幅に抑えられることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
新たに実施予定のBACTH法では、多数のクローンの配列解析を実施する必要が生じるため、上記の余剰分はこの解析に充当する予定である。
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