研究課題
モヤモヤ病は日・中・韓に多い原因不明の脳血管疾患で、内頸動脈分岐部での進行性の動脈狭窄・閉塞と、それによる深刻な脳虚血・脳出血を特徴とする。モヤモヤ病患者の遺伝解析から、新規巨大遺伝子ミステリンのミスセンス変異がモヤモヤ病発病リスクを著しく上昇させることを見出していたが、ミステリンの生理機能およびミスセンス変異の病態機能について不明であった。ミステリンは、2つのAAA+ ATPアーゼモジュールと1つのユビキチンリガーゼドメインを持つ細胞内タンデムAAA+ ATPアーゼ/ユビキチンリガーゼをコードしており、AAA+モジュールを介して巨大なドーナツ状複合体を形成して、何らかの細胞内物理プロセスに寄与することが示唆されていた。また、ゼブラフィッシュを用いた解析から、ミステリンが血管・筋肉・神経の初期発生に必須の役割を果たしており、しかも、ATPアーゼ活性とユビキチンリガーゼ活性の両方が重要であることを明らかにしていた。その一方でミステリンの細胞内機能については不明であり、解析の必要があった。培養細胞を用いた検討から、ミステリンは細胞内の中性脂肪貯蔵オルガネラである脂肪滴に局在し、脂肪分解酵素を負に制御することで、脂肪蓄積を増強する機能を持つことを解明した。このような機能には、ミステリンのATPアーゼおよびユビキチンリガーゼ活性の両方が必要であった。現在さらに、ミステリンの脂肪代謝制御機能の詳細について解析を進めると共に、モヤモヤ病変異による機能異常についても同定を試みている。
すべて 2017
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Scientific Reports
巻: 7 ページ: 44293
10.1038/srep44293