研究課題
繊毛虫のテトラヒメナは、体細胞核に相当する大核と生殖系列核に相当する小核という二種類の機能の異なる核をもつ二核性の単細胞生物である。本研究は、大核の核膜孔複合体に特異的に局在する膜貫通型核膜孔タンパク質Pom121がテトラヒメナ核の分化にどのように関わっているのかを明らかにすることを目的とした。本年度は、小核から大核が分化する過程でPom121が核膜上に出現するタイミングを調べた。その結果、Pom121は別の大核特異的な核膜孔タンパク質であるMacNup98A, Bより遅れて新大核の核膜上に出現することが明らかとなり、Pom121が大核分化における先導的な役割を担っている可能性は高くないと考えられた。そこで、前年度に発見した小核核膜孔に特異的に局在する膜貫通型核膜孔タンパク質Pom82について、小核機能との関連性を明らかにすることを目指し、遺伝子破壊株の表現型解析を行った。Pom82遺伝子破壊株は活発に増殖したが、小核の個数に異常をきたし、通常1細胞あたり1個であるところ0個から十数個まで様々な個数の小核を持つ細胞が観察された。細胞質分裂に先立って起こる小核の有糸分裂が正しく細胞長軸方向に起こっていない細胞が多く見られたことから、分離後の二つの小核がそれぞれ前後に分かれる娘細胞に確実に分配されないため小核の個数に異常が生じるものと考えられた。この結果は、繊毛虫固有の核膜孔タンパク質であるPom82が小核の挙動と安定的な維持に関与していることを示しており、繊毛虫が進化過程でPom82を獲得したことが二核性の成立における極めて重要な要因であったと予想される。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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