研究実績の概要 |
本研究課題は、核輸送因子Importin-αファミリー分子の多機能性に着目し、特にImportin-α1の発現上昇と核局在化が、乳がんの進展や悪性度、がん細胞特異的な遺伝子発現にどのように関与しているかを明らかにするものである。 Importin-α8 (KPNA7)は、本研究課題で着目しているImportin-α1とアミノ酸配列の相同性が高い分子として同定され、輸送担体Importin-β1 と相互作用することから、新規Importin-αサブタイプとして分類されていた。しかしながら、実際、Importin-α8が核局在化シグナル(NLS)受容体として機能するかは不明であった。我々は、大腸菌より精製したImportin-α8リコンビナントタンパク質が、SV40T抗原NLS基質を直接認識し、Importin-β1と3者複合体を形成して核輸送することをセミインタクト核輸送実験系を用いて明らかにした(Kimoto et al., BBA-MCR, 2015)。また、プロテオミクス解析により、Importin-α1とImportin-α8は異なる基質特異性を示すことを明らかにした。さらに、Importin-α1やImportin-α8は、サブタイプごとでヘテロ二量体を形成する活性があり、Importin-α8はこの活性が非常に強い分子であることを証明した(Kimoto et al., BBA-MCR, 2015; Miyamoto and Oka, Data Brief, 2016)。このヘテロ二量体形成活性は、核内での積み荷の積み下ろしに関与していることも示した(Miyamoto and Oka, Data Brief, 2016)。 Importin-α1に特異的に結合する分子をプロテオミクス解析した結果、新たにimportin β binding (IBB) domain 結合分子としてRetinoblastoma Binding Protein 4 (RBBP4)を同定した。RBBP4は、核内RanGTPと協調してImportin-αからImportin-β1 を解離させる反応に寄与し、古典的NLSをもつ核タンパク質の核内輸送効率を制御していることを明らかにした(Tsujii, J. Biol. Chem, 2015)。
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