研究課題
(1)これまでの研究で、マウスのSox9遺伝子の神経堤エンハンサーにGFPをつないだレポーター遺伝子および、エンハンサーにオポッサム型の変異を導入したレポーターを鳥類胚に導入した場合、前者は神経堤細胞で活性化されるのに対し、後者は神経堤が誘導される前段階の神経境界領域で活性化されることがわかっていた。今年度は、このオポッサム型変異レポーターが神経境界域で活性化される機構を明らかにするために実験をおこなった。オポッサム型Sox9エンハンサーに神経境界形成にかかわるc-Myb結合配列があることから、鳥類胚にレポーターとともにc-Myb発現ベクターを導入したところ、異所的なレポーターの活性化が見られたことから、c-Mybの関与がが示された。そこで、これらのエンハンサーにルシフェラーゼ遺伝子をつないだレポーターを作成し、繊維芽培養細胞株を用いてアッセイをおこなったが、c-Mybによる特異的な活性化は認められなかった。したがって、オポッサム型エンハンサーの神経境界における活性化には、さらに別の因子が必要であると考えられた。(2)オポッサム胚を用いてエンハンサー解析をおこなうために、全胚培養系の条件検討をおこなった。抗酸化剤の添加や子宮組織との共培養などを試みたが、良い結果は得られなかった。(3)オポッサム胚から神経堤細胞を大量に取り出すことが難しいため、線維芽細胞を神経堤細胞にダイレクトリプログラミングすることを計画した。条件検討のため、マウスの線維芽細胞を用いて実験を行った。Sox10神経堤エンハンサーGFP遺伝子をTol2システムでゲノムに挿入し、同時に導入したSox10遺伝子をTetOnシステムで発現誘導する実験系を構築した。これにより、GFP陽性細胞が得られることがわかった。
3: やや遅れている
オポッサム胚の全培養系が確立できておらず、また線維芽細胞から神経堤細胞へダイレクトリプログラニングする手法も条件検討の段階であるため、エンハンサー活性の解析をオポッサムの細胞ではなく鳥類胚や培養細胞株でおこなわねばならなかったため、進捗状況が全体的に遅れ気味であった。また、年度末が近づくにつれ、研究費が枯渇し、必要な試薬類を十分に入手することが困難になったことも要因と思われる。
(1)エンハンサー活性の定量について、鳥類胚を用いてルシフェラーゼアッセイをおこなうことを検討している。また、c-Myb以外にA-MybやB-Myb、RXRなど他の転写因子の関与の可能性について検討をおこなう。(2)オポッサム胚の全胚培養系について、より一般的な牛胎児血清やラット血清では無くオポッサム血清を培養液に添加することを検討している。現在、少量ながらオポッサム血清が採取できている。(3)線維芽細胞をダイレクトリプログラミングして神経堤細胞に転換する実験については、さらに条件検討を進める。最近になって、マウス由来細胞を用いる場合にc-MybとKJF4遺伝子を共導入すると効率が上がることが報告されたので、同様の方法についても検討する。
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