昨年度から開始した、オポッサム胚において予定頭部神経堤領域でSox9遺伝子が早く発現するために必要な、時間的かつ空間的活性をもつヘテロクロニーエンハンサーの探索をおこなった。 1. 方法:オポッサムのゲノムよりPCRにてSox9遺伝子周辺のDNA断片(1箇所につき1~5kb程度)を多数幅し、EGFPレポータープラスミドに挿入した。作成したレポーター遺伝子を神経板形成期のウズラ胚(発生ステージ3.5~4)の予定頭部神経堤領域付近に電気穿孔法にて導入し、6、12、24時間後にEGFP遺伝子の発現を観察した。 2. 結果:現在までに、プロモーターから350kb上流までの部分、ヒトで変異が生じると顎に異常が生じることが知られている配列に対応する領域付近100kb、さらにイントロンについて探索した。いままでのところウズラの頭部神経堤で特異的に活性を持つエンハンサーは発見されておらず、イントロンに予定神経板領域で一過的かつ弱い活性があるエンハンサーを見つけるに留まっている。 3. 考察:まだ1.5Mbpにおよぶ長さのオポッサムSox9遺伝子の周辺を探索しきれておらず、さらなる実験が必要である。一方で、ウズラ胚を用いた解析ではオポッサムの頭部神経堤特異的エンハンサーの活性を検出できない可能性が依然として残されており、オポッサムのiPS細胞の作成とそこからの神経堤誘導の実験系や、オポッサム胚の全胚培養と遺伝子導入実験系の確立をすすめめる必要があるかもしれない。
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