最終年度は、マウス胎仔から取り出した造血性内皮細胞を造血幹細胞に分化させる培養系の確立を目指した。先ず、胎生11.5日齢胎仔から取り出した造血性内皮細胞(CD45(-) VE-cadherin(+) CD41(+)細胞)をOP9ストロマ細胞と凝集培養することにより、放射線照射マウスに移植可能な造血幹細胞に分化させることができた。次に、胎生10.5日齢胎仔から取り出した造血性内皮細胞(CD45(-) VE-cadherin(+)細胞)をOP9ストロマ細胞と凝集培養することにより、同様に造血幹細胞に分化させることができた。さらに、胎生9.5日齢胎仔の細胞を同様に培養することにより造血幹細胞に分化させることにも成功した。この成果は、マウス胎仔から取り出した真正の造血性内皮細胞を試験管内で造血幹細胞に分化させることが可能であることを実証している。従って、マウスES細胞から真正の造血性内皮細胞を得ることができれば、造血幹細胞まで分化誘導することが可能であることを強く示唆している 補助事業期間全体を通じて以下のような成果が得られた。マウスES細胞をアクチビン存在下にOP9ストロマ細胞と共培養することにより、造血性内皮細胞を効率よく分化誘導する培養系を開発した。ES細胞から分化誘導した造血性内皮細胞は血球分化能と内皮細胞コロニー形成能を合わせ持ち、その内皮細胞分化プログラムをCXCR4シグナルが抑制し二分化能を調節することを明らかにした。一方、マウス胎仔から取り出した造血性内皮細胞から造血幹細胞を分化誘導する培養条件を検討し、胎生9.5日齢の未分化細胞からでも造血幹細胞を分化誘導できる培養系を確立した。これまでのところ、この培養系を用いてもES細胞から得た造血性内皮細胞から造血幹細胞を誘導することには成功しておらず、ES細胞から真正の造血性内皮細胞を分化誘導することが喫緊の課題である。
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