アフリカツメガエル卵の細胞膜マイクロドメインに局在する単一膜貫通型タンパク質ウロプラキン3(UPIII)の受精やその他の卵細胞における生理機能を明らかにすることを目的として、UPIII遺伝子をノックアウトした二倍体ツメガエル(ネッタイツメガエル)の作成を試みた。これまで共同研究者(広島大学両生類研究センター)による協力支援のもと、TALENs法およびCRISPR/Cas9法によるUPIIIノックアウトF0個体および同個体の交配実験によるホモノックアウトF1個体の作成を試みてきたが、いまのところホモノックアウト個体の生育が著しく不安定(幼生致死などの頻発)であり、成功するに至っていない。現在はヘテロノックアウト雌個体からの卵巣の摘出、または未受精卵の調製をへた単一細胞生物学的手法により、UPIII発現の有無と当該卵細胞の生物学的機能(成熟能、受精能など)の検証を行いながら、引き続きホモノックアウトF1個体の作成に挑戦していく予定である。 膜マイクロドメインの形成機構を明らかにする目的で、アフリカツメガエル卵母細胞のホルモン依存的な卵巣組織からの離脱機構をテーマとする実験的検証に進捗があった。卵巣組織からの離脱現象を試験管内再構成することに成功した。すなわち、外科的に摘出した卵母細胞(卵巣組織の断片)をコラゲナーゼ処理により「プロゲステロン依存的に」臚胞細胞層から離脱することができるように調整することが可能となった。このわれわれが「ホルモン依存的な試験管内排卵システム」とよぶ実験系を用いることで、アフリカツメガエル卵母細胞は体内でホルモン依存的に卵巣組織を離脱(排卵)したのちに細胞質レベルの成熟反応を実行することが明らかとなった。現在は、ホルモン依存的な排卵過程における臚胞細胞および卵母細胞のMAPキナーゼとマトリクスメタロプロテイナーゼの関与を検討している。
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