研究課題
神経前駆細胞における細胞表層F-アクチンの集積ならびに異方的な細胞退縮の短期的な周期動態を、比較的に長期にわたり進行する組織レベルでの変形運動と同時に解析する手法は前年度までに確立した。従って本年度はこの手法を活用し異方的な細胞退縮が効率的な収斂運動に繋がる過程を明らかにすることを目指した。まず画像データから得た信号データにトップハット様フィルターを処理しF-アクチン集積と異方的な細胞退縮の周期パターンを抽出することで、新たに確立した解析系でも両者の間に時間ずれを伴った関連性が観察されることを確認した。次に複数の前駆細胞の相対的な位置関係の時間変化から組織レベルの収斂速度を算出して周期パターンとの比較解析を行った。その結果、未処理の野生型胚では細胞レベルの短期的な周期性と組織レベルでの収斂速度は発生時間に伴う変化は小さくむしろ一定である傾向が見出され、このことから神経管の形成過程ではアクトミオシン活性の周期性は安定に保たれており、それが閉鎖運動に頑強性を与える可能性が考えられた。この考えはブレビスタチン処理胚やVangl2変異体において細胞レベルの周期性の強度と組織レベルの収斂速度に関連性があることからも支持された。一方で細胞間接着と細胞表層F-アクチンの物理的結合に関わるN-cadherinの変異体では周期性の強度に明らかな変化は検出されない一方で組織収斂速度が低下したことから、アクトミオシン活性の周期性が閉鎖運動に頑強性を与える過程は細胞接着依存的に確立される可能性が示唆された。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
PLOS Biology
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