研究課題
ストリゴラクトン(SL)は植物の枝分かれを制御する植物ホルモンである。また、根圏におけるSLの作用として、アーバスキュラー菌根菌の菌糸分岐誘導やストライガやオロバンキなどの根寄生植物に対する種子発芽刺激作用がある。典型的なSLの化学構造は3環性のラクトン(ABC環)とブテノライド(D環)がエノールエーテル結合したものである。一方、近年、様々な植物種からBC環を持たない非典型的なSLも単離されている。いずれのSLもカロテノイドから生合成される。まず、all-trans-β-caroteneがD27、CCD7およびCCD8酵素によりSL前駆体であるcarlactone(CL)に変換される。研究代表者は、シロイヌナズナのシトクロムP450酵素MAX1(CYP711A1)は、CLのC-19位をカルボキシル基まで酸化してcarlactonoic acid(CLA)に変換させる酵素であることを明らかにしている。一方で、イネのMAX1ホモログの一つ(CYP711A2)はCLからSL基本骨格をもつ4-deoxyorobanchol(4DO)に変換させる機能があることが報告されている。昨年度までに、トウモロコシ、トマト、ポプラ、ストライガなどの他の種子植物のMAX1ホモログはシロイヌナズナと同様にCLをCLAへ変換するが、4DOの生産能はないことを明らかにしている。そこで、本研究では、MAX1の機能についてさらに進化的な考察を行うために、維管束植物として最も初期に分岐したヒカゲノカズラ植物であるイヌカタヒバのMAX1の酵素機能を調べた。その結果、イヌカタヒバのMAX1ホモログはイネCYP711A2と同じようにCLを4DOに変換する機能があることが明らかとなった。このことから、種子植物とヒカゲノカズラ植物の共通祖先のMAX1の機能はCLから4DOを生産する機能だったと推測された。
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New Phytologist
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10.1111/nph.15055
J. Exp. Bot.
巻: 69 ページ: 2231-2239
10.1093/jxb/ery090