研究課題/領域番号 |
15K07094
|
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
山口 雅利 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20373376)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | NACドメイン転写因子 / タンパク質相互作用 / シロイヌナズナ |
研究実績の概要 |
NACドメイン転写因子であるVNI2は、同じくNACドメイン転写因子であるVND7と相互作用する因子として単離された。詳細な解析の結果、VNI2はVND7と結合することで、VND7の転写活性を阻害し、道管形成を抑制することが明らかとなっている。また、発現パターンの解析より、VNI2は道管形成以外の役割も有している推測された。VNI2のさらなる機能の解析を行うことを目的として、相互作用因子の探索を行ったところ、30ものNACドメイン転写因子が単離された。 今年度はまず、VNI2と相互作用因子として単離されたNACドメイン転写因子であるATAF2の機能解析を行った。一過的発現解析によりATAF2の転写活性を評価した結果、同一条件下において、プロモーター配列に依存して、転写活性化活性と転写抑制活性の両方を示すことが明らかとなった。また、ATAF2は同じ下流遺伝子に対して、細胞や環境条件によっても異なる転写活性を持ちうることが示唆された。さらに、ATAF2は老化の鍵遺伝子であるORE1の発現を正に制御することを明らかにした。実際に、野生型と比較してataf2変異体は老化が遅延するのに対し、ATAF2過剰発現体は老化が促進されることを明らかにした。さらに、VNI2は、ATAF2の老化の促進効果を阻害することが、生化学的、および遺伝学的な解析により明らかになりつつある。 VNI2タンパク質は非常に不安定であることが知られていたが、これまでにVNI2と相互作用する因子として、ユビキチンE3ライゲースとして機能するBPMを同定した。昨年度はBPMの機能が低下した変異体を作成したので、今年度はその解析を行った。その結果、BPM機能低下植物体では、子葉における道管形成に異常が認められて。これは、野生型と比較してVNI2タンパク質が高蓄積していることが要因と考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VNI2と相互作用するNACドメイン転写因子との作用機構が、生化学的・遺伝学的な手法により明らかになりつつあることから、当初の予定を十分達成していると評価できる。また、作用機構を調べるにあたり、相互作用因子の機能解析を進めてた結果、新規の知見を見出しており、その内容で論文をまとめているところである。 また、相互作用因子を通じたVNI2の安定性を制御する分子機構についても、変異体を用いた表現型解析から重要な知見が得られてきている。
|
今後の研究の推進方策 |
VNI2と相互作用する転写因子を多数同定しており、まだ詳細な作用機構を解析しているのはまだ一部である。したがって、引き続き、VNI2を中心とした様々な転写因子との作用機構を解析することで、一つの転写因子が多様な複合体を形成する生物学的意義を解明したいと考えている。現在、ある制御機構の転写カスケードの複数の転写制御ステップでVNI2により制御されている可能性も示唆されている。この点についても掘り下げて解析を進めていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題である、NACドメイン転写因子ヘテロ複合体の生物学的役割について、新しい知見が多く得られて当初の目標以上に進展しているなかで、その結果をまとめるためにトランスクリプトーム解析などの大規模な発現解析の必要性が生じしてきた。現状は実施するための条件を検討するところであり、実際の実施は来年度となってしまうことが大きな理由である。また、その後速やかに論文投稿を進めていくための費用も必要となる。
|