研究課題/領域番号 |
15K07095
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
藤木 友紀 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (00414011)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 油糧作物 / 種子 / 油脂 / カメリナ / シロイヌナズナ / 種子貯蔵蛋白質 / 分枝 |
研究実績の概要 |
油糧作物の種子では貯蔵タンパク質と油脂の蓄積量に負の相関関係があり、貯蔵タンパク質の削減による油脂生産の増強が期待されてきた。しかし、一般に種子貯蔵タンパク質の削減は困難であり、油脂生産強化を目指した分子育種への応用が課題となっていた。代表者は種子貯蔵タンパク質の遺伝子数が少ないシロイヌナズナに着目し、貯蔵タンパク質12Sグロブリンの遺伝子破壊により油脂含量及び地上部のバイオマスが増大することを報告している(藤木ら2013年)。本研究では、油糧作物のモデル植物カメリナにこの手法を応用し、次世代のバイオリソースにふさわしい新たな油脂生産システムの構築を目指す。 1.カメリナ種子貯蔵タンパク質遺伝子の発現抑制株 形質転換体(種子)のスクリーニングが容易なベクター系に切り替えて、カメリナ12SグロブリンのRNA干渉コンストラクトを作製し、カメリナへ花序浸し法による形質転換を実施した。 2.シロイヌナズナの12Sグロブリン変異体における分枝形成促進のメカニズム解明 シロイヌナズナの12Sグロブリン変異体の葉、茎の根元、分枝の付け根部分を分けてサンプリングし、分枝の制御に関わる候補遺伝子の発現をRT-PCRにより比較した。その結果、サイトカイニン生合成遺伝子群の一部に、12Sグロブリン変異体で転写産物レベルの上昇が見られた。また、油脂生産の最適化を目指し、植物の栽培条件の再検討も行った。使用している土壌の保水性がやや高いと思いわれたので、根の酸欠が起こらないような適度な乾燥条件を与えることを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 種子特異的に発現させた赤色蛍光蛋白質をマーカーとするベクターを用いて12Sグロブリン遺伝子RNA干渉用プラスミドを再構築し、アグロバクテリアを介したカメリナへの花序浸し形質転換を二度実施した。この種子(T0)を蛍光実体顕微鏡下でスクリーニングして、やや赤色に光って見えたもの数個をレスキューしたが、ゲノム遺伝子型のPCR検査の結果、形質転換体ではなかった。種皮がやや薄いと自家蛍光でやや赤色に見える傾向があり、より強い赤色蛍光を持つ種子を選抜する必要がある。植物の栽培スペースの問題から、形質転換に用いるカメリナの個体数は限られていた。しかし、花序浸し法によるカメリナ形質転換の効率はあまり高くないらしく、次年度には形質転換を複数回実施して、もっと大量の植物種子をスクリーニングする予定である。
2. シロイヌナズナの12Sグロブリン変異体(分枝が起こる時期)の葉や茎(脇芽)を用いたRT-PCR解析の結果、サイトカイニン生合成遺伝子の一部に、転写産物レベルの増加が見られた。ストリゴラクトンやオーキシン関連遺伝子も幾つか調べたが、調べた範囲では野生株と比べて大差がなかった。ただ、12Sグロブリン変異体は野生株より分枝が多い傾向はあるものの、以前報告したときに比べてその表現型の違いが小さくなっている問題も生じた。以前使用していた植物培養土が販売停止になり、培養土を変えたことが理由の一つとして考えられる。そこで植物培養条件(土壌)の再検討も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後 1.カメリナ種子貯蔵タンパク質の形質転換を、個体数を多くして実施する。
2.シロイヌナズナ12Sグロブリン変異体に、油脂合成関連遺伝子DGAT1を過剰発現させた株で、分枝の増加、および相乗的な油脂生産強化を検証する。今年度は植物の栽培条件の違いにより種子の油脂含量にばらつきが見られた。以前使用していた植物培養土より土壌の保水性が高いことが理由の一つと思われる。水はけのよい粗い土を混ぜたり固形のピートモス商品を使用して、植物栽培条件をより良くしたうえで、油脂解析を追試する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入の端数で百数十円の残金が出たが、ほぼ予定通りに予算を消化しており、問題はない。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額(繰り越し分)は百数十円あまりしかないので、次年度の使用計画には影響を与えない。
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