研究課題
チオレドキシン(Trx)は生物界に広く分布し、様々な代謝系を触媒する酵素(蛋白質)の活性を調節する重要な蛋白質である。最近、私達は、窒素固定性ラン藻、Anabaena sp.PCC7120(A.7120)において、Trxが窒素固定酵素ニトロゲナーゼと相互作用するという興味深い結果を得た。ニトロゲナーゼは分子状窒素をアンモニアに還元する複雑な金属酵素であり、この地球上における全窒素固定量の50%を占めるなど、窒素動態において極めて重要な酵素である。ニトロゲナーゼは還元コンポーネント(NifHホモ二量体)と触媒コンポーネント(NifD-NifKヘテロ四量体)から構成されるが、そのいずれも『金属中心』を保持しているため、分子状酸素に触れると数分で不可逆的に失活する。本研究では、A.7120のニトロゲナーゼについて、嫌気条件下で生化学的解析を行うための研究基盤構築およびTrxによる活性制御機構の解明を試みてきた。申請者は、ニトロゲナーゼについて、様々な検討を行った結果、光合成細菌を用いた発現系と嫌気チャンバーを利用した精製システムを用いることで、金属中心の形成されたNifH蛋白質を得ることに成功した。また、ニトロゲナーゼの窒素固定活性に必須である金属中心は、NifUと呼ばれる蛋白質により生合成されることが知られている。申請者はNifUのN末端側にある触媒部位がTrxにより制御されることをすでに示してきたが、本研究では、NifUのC末端側にある2つめの触媒部位もTrxによる還元を受けることが示され、C末端側の触媒部位もレドックス制御される可能性が示唆された。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Biochemical Journal
巻: 475 ページ: 1091-1105
10.1042/BCJ20170869