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2015 年度 実施状況報告書

青色光に依存した気孔開口を仲介するプロテインキナーゼの同定と機能的特徴づけ

研究課題

研究課題/領域番号 15K07101
研究機関名古屋大学

研究代表者

井上 晋一郎  名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40532693)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード気孔開口 / 青色光 / フォトトロピン / プロテインキナーゼ
研究実績の概要

植物の表皮に無数に存在する気孔は、青色光に応答して開口し、植物と大気間のガス交換を促進して光合成を支える重要な役割をもつ。青色光受容体フォトトロピンは、気孔孔辺細胞においてシグナル伝達を誘導し、細胞膜H+-ATPaseを介したカリウムの能動輸送を駆動して気孔を開口させる。この応答には、H+-ATPaseとカリウムチャネルの両方の活性化が必要であるが、青色光がどのようにしてこれらのイオン輸送体を活性化するのか、その分子メカニズムは完全には解明されていない。申請者はこれまでに、フォトトロピンの相互作用因子として同定した二つのプロテインキナーゼ(キナーゼAとキナーゼB)が気孔開口を仲介することを見出した。本研究では、これらのプロテインキナーゼが気孔開口に必要なイオン輸送体の活性化にどのように関与するのか明確にし、気孔開口シグナル伝達をより分子レベルで理解することを目的とする。
本年度は、特にキナーゼAについて遺伝学を用いた機能解析を進め、キナーゼAが光条件下の気孔開口を正に調節する新たなシグナル伝達因子であることを証明した。また、キナーゼAは確かに植物細胞内でフォトトロピンと相互作用することを明らかにした。さらに、単離孔辺細胞を用いた生理・生化学的解析により、キナーゼAがH+-ATPaseの活性化とは別の経路で、青色光下でカリウムチャネルを活性化するシグナル伝達を仲介することを見出した。これらの結果から、気孔開口に貢献する新たなシグナル伝達経路の存在を明らかにし、キナーゼAの気孔開口メカニズムにおける機能をある程度明らかにすることができた。
キナーゼBについては、主に薬理学的な解析を進め、キナーゼBの阻害剤が気孔開口を抑制すること、H+-ATPaseのリン酸化と活性化を抑制することを見出した。キナーゼBはキナーゼAとは異なる作用点において気孔開口を仲介すると予想される結果を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究で機能解析の対象とする二つのプロテインキナーゼAとBに関して、キナーゼAについては目的の研究を終え、学術雑誌への論文投稿を進めている段階まで来ている。従って、当初の計画通りに進んでいると判断した。

今後の研究の推進方策

キナーゼAに関しては、2016年度の早い段階で論文採択を目指す。
キナーゼBについては、2016年度は分子遺伝学的な解析を進め、気孔開口の正の調節因子である可能性を検証する。前年度からキナーゼBの発現抑制株と過剰発現株の作製を進めているため、系統が確立ししだい詳細な表現型の解析を進める。その際、青色光に依存した気孔開口を多角的に調べるため、単離表皮を用いた気孔開度測定だけでなく気孔コンダクタンスや葉温測定も行い、生葉の応答に着目した解析を進める。また、単離孔辺細胞を用いた生理・生化学的解析により、キナーゼB発現抑制株と過剰発現株の孔辺細胞のH+-ATPaseの応答を調べ、薬理学実験と対応する結果が得られるのか明らかにする。これらの実験により、H+-ATPaseの活性化へのCK2の関与を明確にし、CK2がフォトトロピンの下流、かつ細胞膜H+-ATPaseの上流で機能し、気孔開口を仲介する可能性を検証する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)

  • [国際共同研究] University of Glasgow(United Kingdom)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Glasgow
  • [国際共同研究] Henan University(China)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      Henan University
  • [雑誌論文] GOLDEN 2-LIKE transcription factors for chloroplast development affect ozone tolerance through the regulation of stomatal movement2016

    • 著者名/発表者名
      Yukari Nagatoshi, Nobutaka Mitsuda, Maki Hayashi, Shin-ichiro Inoue, Eiji Okuma, Akihiro Kubo, Yoshiyuki Murata, Mitsunori Seo, Hikaru Saji, Toshinori Kinoshita, and Masaru Ohme-Takagi
    • 雑誌名

      PNAS

      巻: 113 ページ: 4218-4223

    • DOI

      doi:10.1073/pnas.1513093113

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Photosynthesis activates plasma membrane H+-ATPase via sugar accumulation in Arabidopsis leaves2016

    • 著者名/発表者名
      Masaki Okumura, Shin-ichiro Inoue, Keiko Kuwata, and Toshinori Kinoshita
    • 雑誌名

      Plant Physiol

      巻: 未確定 ページ: 未確定

    • DOI

      doi:10.1104/pp.16.00355

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] In vitro Phosphorylation Assay of Putative Blue-Light Receptor Phototropins Using Microsomal and Plasma-membrane Fractions Prepared from Vallisneria Leaves2015

    • 著者名/発表者名
      Yuuki Sakai, Shin-ichiro Inoue, Shingo Takagi
    • 雑誌名

      Bio-protocol

      巻: 5 ページ: iss21

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Identification and functional analyses of the protein kinase that interacts with blue light-receptor phototropins in Arabidopsis2016

    • 著者名/発表者名
      Shin-ichiro Inoue, Eirini Kaiserli, Hirotaka Takahashi, Tatsuya Sawasaki, Toshinori Kinoshita, John M. Christie, Xiao Zhang, Atsushi Takemiya, Ken-ichiro Shimazaki
    • 学会等名
      第57回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      岩手大学
    • 年月日
      2016-03-18 – 2016-03-20

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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