研究課題
ハマウツボ科の寄生植物であるストライガは、アフリカの穀物生産に深刻な被害を与える有害植物として知られている。植物ホルモンであるストリゴラクトン(SL)は、ストライガの発芽を刺激するホストファクターでもあることから、寄生能力の進化とストライガの防除の両方において鍵となる因子と考えられている。しかし、ストライガでは遺伝学解析が不可能であるため、そのシグナル伝達を解明する試みはこれまで一切なされていない。本研究では、独自に開発したシロイヌナズナをモデル系とする戦略でこの難題に取り組む。植物ホルモンの機能が、ホスト認識という寄生能力へと進化した分子遺伝的背景を解明すると同時に、ストライガの撲滅技術開発の礎になると期待できる。これまでの研究より、シロイヌナズナのSL受容体HTLが光受容体を含む光シグナル伝達因子と遺伝学的に相互作用することを明らかとした。今年度は、HTLと光シグナル伝達因子の生化学的相互作用解析の実験系の確立に取り組んだ。HTL受容体の生化学的特性を明らかとした。ストライガのホモログとの比較から、寄生植物特有に見られる受容特性の進化、リガンドの選択性の理解など、これまでまったく未知であったストライガのSL受容体の生化学的特性を解明する足がかりを得たと考えている。
2: おおむね順調に進展している
光受容因子の大腸菌によるタンパク質発現が困難を極めたが、融合タグを工夫することでこれに成功した。また、受容されることによって初めて蛍光を発する分子であるヨシムラクトンを使った新たな実験系を立ち上げたことを受け、これを利用して迅速に計画を達成できるよう若干の方向修正を試みている。総合的には、おおむね順調に進展していると考えている。
組換えタンパク質を用いた生化学的実験から、HTLとヨシムラクトンとの結合は非常に弱いことが判明した。そこで、受容ポケットに突然変異を入れ、ヨシムラクトンと結合できるよう改変したタンパクを開発することで、in vitroでの結合を定量的に解析する実験系を立ち上げる。そのうえで、光シグナル因子がヨシムラクトンの結合にどのように影響を与えるかを解析する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (2件)
Science
巻: 349 ページ: 864-869
10.1126/science.aab3831
巻: 350 ページ: 203-207
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http://www.itbm.nagoya-u.ac.jp/ja/research/2015/08/Yoshimulactone-Striga.php