研究実績の概要 |
植物は環境ストレス(熱、塩等)に曝されると細胞内の翻訳状態が劇的に変化し、多くのmRNAからの翻訳が抑制される中で一部mRNAからの翻訳は維持される。先行研究において、熱と塩ストレスによる翻訳状態変化をゲノムスケールで比較することで、両ストレス下での全mRNAの翻訳挙動は非常に類似しているが、熱では維持されるが塩では抑制されるなどストレス間で翻訳状態変化が異なるmRNAの存在も認められた。本研究では、これらmRNAに着目し、特にストレスの種類に特異的な翻訳制御に関わる5’UTRの配列特徴を明らかにすることを目的とした。植物遺伝子には、場合によっては複数の転写開始点が存在していることが知られている。本研究では5’UTRの配列に着目することから、シロイヌナズナ培養細胞T-87の培養3日目コントロール(Control)、37℃熱ストレス条件下(37℃, 10 min)、NaCl 200 mM塩ストレス条件下(200 mM, 10 min)の細胞から抽出した全RNAからCAGEライブラリーを作製し、シークエンス解析を行うことで、全mRNAについて5’末端の配列情報(5’UTR配列情報)の取得を行った。その結果、熱抑制/塩維持、熱維持/塩抑制されるmRNAの中で、転写開始点が収束していて転写開始点が各条件で変化しない2種(At1g09970, At5g13180)と各条件で転写開始点が変化していた6種(At1g16030, At1g53540, At3g08970, At1g70300, At2g46240, At5g37340)をストレス種特異的な翻訳挙動を示すmRNAとして選び、それぞれの5’UTRを解析候補として選抜した。
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