研究課題
昨年度までに行った形質転換体を用いた解析より、ストレス種特異的な翻訳状態変化を規定する要因としての5’UTRの重要性が示され、5’UTR内に制御配列が存在すると考えられた。この中で、熱抑制/塩維持という翻訳の挙動を示す候補 mRNAの5’UTRに限定すると、CU反復やCU richという共通性が認められた。そこで、CAGE解析によって転写開始点(5’UTR)を網羅的に同定し、得られたデータを用いて、5’UTR内にCU反復領域等を有するmRNAのストレスに応答した翻訳状態変化を網羅的に解析した。その結果、5’UTR内にCU反復領域等を有するmRNAの翻訳状態変化は、全mRNAの翻訳状態変化と比較して統計的に有意な偏りが認められた。次に、CU反復領域等が熱抑制/塩維持のストレス種特異的な翻訳制御に寄与しているのか調べるため、CU反復配列を持つキメラ5’UTRを連結したレポーター遺伝子を発現する形質転換体を用いた解析を行った。ポリソーム/定量 RT-PCR解析を行った結果、CU反復配列を持つキメラ 5’UTRを連結したFLUC mRNAは、熱抑制/塩維持である内在性 At1g09970.1 mRNAと類似した挙動を示した。これらの結果から、5’UTR内のCU反復領域等が、熱抑制/塩維持というストレス種特異的な翻訳状態変化に寄与する制御配列である可能性が考えられた。植物は環境ストレス(熱、塩、乾燥等)に曝されると細胞内の翻訳状態が劇的に変化する。一方で、熱では維持されるが塩では抑制されるなどストレス間で翻訳状態変化が異なるmRNAの存在も認められる。本研究により、環境ストレス種特異的な翻訳制御について、5’UTR内のCU反復領域の有無など制御機構の一端が明らかとなった。
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10.1016/j.jbiosc.2017.08.007
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