シロイヌナズナ胚軸の2次成長の分子機構の解析で,本年度は次の研究成果を得た。 1)胚軸2次成長過程で内鞘細胞の分裂が盛んになってから、その最外層がコルク細胞になる。このコルク細胞の分化の前にその1層外側の内皮細胞で自家蛍光が見られた。そして、この内皮細胞の蛍光は内鞘細胞最外層がコルク細胞になると失われた。また、野生型胚軸では最終的にコルク層は2 層形成され、1 層目のコルク層は抽薹前、2層目は抽薹後に形成された。 2)これまで行ったシロイヌナズナの胚軸2次成長過程の詳細観察を基に、2次成長に関わる分裂開始直前の播種後 3日目、内鞘細胞の多層化が始まる播種後 9 日目、内鞘細胞最外層の細胞でコルク細胞の形成がみられ、また環状の維管束形成層が確認できる播種後 12 日目、中心柱の最外層全体でコルク細胞の形成がみられ、維管束領域では維管束形成層による拡大がみられる播種後 14日目の計 4 点からRNAを採取し、マイクロアレイ解析を行った。得られたアレイデータを評価するため、胚軸2次成長過程で発現誘導される既知の遺伝子の発現を確認した。播種後 3 日目を対照区とし、fold-change (FC)値 2 以上を示す遺伝子について調べたところ、維管束形成層の活性維持に関わる遺伝子として知られる WOX4、WOX14 (WOX4/14) が経時的に増加しており、維管束領域の拡大とよい相関がみられた。さらに、コルク層形成との関連が高いリグニンやスベリン合成関連遺伝子群の9日目以降での急激な上昇が見られた。
|