研究実績の概要 |
生殖器官の形成は生物種の存続に必須な重要イベントである。申請者は植物の生殖器官形成の分子メカニズムをあきらかにするため、モデル植物であるシロイニナズナの稔性低下変異体(種子ができず、さやが大きくならない)の探索を行い、花粉表層の構造が異常となり稔性が低下する新規変異体を見出した。さらに同変異の原因遺伝子として、小胞体からの小胞出芽に働くSec31のホモログ(AtSec31A)を同定し、細胞内小胞輸送が花粉形成に深く関わっていることを示した。花粉の発達において葯内のタペート細胞は花粉表面成分を供給する重要な役割を果たしている。Sec31ホモログはタペート細胞で強く発現しており、タペート細胞が花粉表層物質を分泌する際の輸送に働くことが推察された。小胞体からの小胞出芽には、Sec31と共にSec13、Sec23、Sec24タンパク質が働くことが知られている。Sec31はSec13と複合体を形成し、Sec23とSec24の複合体を架橋することで小胞が形成される。を形成申請者らはまずSec24ホモログに着目し、3種類のシロイニナズナホモログ(AtSec24A、AtSec24B、AtSec24C)のAtSec24B変異体で花粉発芽率が低下し、AtSec24Bと24Cの二重破壊で雌雄それぞれの配偶体の発達が途中で停止することを明らかにした。次いでSec23ホモログの研究に着手した。シロイヌナズナにはSec23ホモログが7種(AtSec23A, 23B, 23C, 23D, 23E, 23F, 23G)存在しているが、AtSec23Fと23Gの二重破壊で花粉の表層構造が顕著に異常になることを見出した。これはAtSec31A変異の表現型と類似しており、花粉形成に必要な何らかの因子の輸送がAtSec31A、AtSec23F、AtSec23Gの働きに依存していることが示された。
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