研究課題
シアノバクテリアSynechocystis 6803の光化学系II(系II)複合体構築時に、11種の機能未知タンパク質(Slr0172、Sll1398、Slr1128、Sll1099、Slr0399、Sll1390、Slr0013、slr0483、Sll1106、Slr0670、Slr1739)が係わることが研究代表者により予想されている。これら11種について、欠失変異体とHis-tag融合体の作出を進めてきた。暗所では成熟型系IIを蓄積することができない株(MYS株)のSlr0399にHis-tagを導入した変異体を暗所培養し、Slr0399と複数のタンパク質を含む複合体が得られたため、他タンパク質との強い総合作用が明らかとなった。しかし、このSlr0399やSll1398などの欠失変異体の増殖は野生株と遜色なく、他タンパク質が機能を代替する可能性が示唆された。一方、Slr0172のように、His-tag導入体が系IIの成分と同時には精製されず、系IIの構築時にごく少量含まれるか、複合体との結合が弱いことが示唆されるタンパク質も見出された。Slr1739の欠失変異体では通常の系II電子伝達活性が認められたものの、増殖が顕著に遅く、温度が高い条件では増殖が困難であることが見出された。したがって、正常な系IIが構築はされるものの、安定的な系IIの構築に不可欠であることが示唆された。このように、本研究で構想したMYS株を用いた実験系は、系IIの構築時のタンパク質組成を解析する上で有用な系である。そして、Sll1099は生存に必須のタンパク質であると考えられ、Slr0399やSlr1739は、安定的な系IIの構築にとくに重要であることが判明した。一方、シアノバクテリアでは未知の他のタンパク質が機能を代替することができ、系IIの構築の仕組みが極めて柔軟であることも明らかとなった。
すべて 2017
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 72 ページ: 3180-3188