植物と菌根菌の共生メカニズムは最初の陸上植物であるコケ植物で成立して、複雑な進化を遂げながら現代に至っていると考えられる。イネやマメ科植物などの被子植物における共生遺伝子の同定は難航しているが、本研究は遺伝子の冗長性(同じ機能の遺伝子の重複度合い)が低いコケ植物フタバネゼニゴケをモデルとして、効率の良い遺伝子導入系や標的遺伝子破壊系を確立することを目的としている。 初年度は遺伝子導入の方法のために、無性芽を用いた形質転換の条件検討などを行った。植物育成のトラブルなどにより計画が遅れているが、共同研究者から譲渡された形質転換効率を上昇させる可能性のある物質などを使用しながら検討を続けている。またフタバネゼニゴケの二次代謝物質が形質転換や胞子形成に影響を与えている可能性を考えて、成分分析を行った。その結果、シソなどに多く含まれる抗菌性のペリルアルデヒドが大量に蓄積していることが判明した。今後はペリルアルデヒドの影響を抑えるために、アグロバクテリウムの共存培養の条件を検討していくなどの工夫をしながら研究を進めていく予定である。
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