研究課題
植物とアーバスキュラー菌根菌(AM菌)の共生メカニズムは最初の陸上植物であるコケ植物で成立して、複雑な進化を遂げながら現代に至っていると考えられる。イネやマメ科植物などの被子植物における共生遺伝子の同定は難航しているが、ゼニゴケやヒメツリガネゴケにおける解析から、コケ植物は被子植物と比較して遺伝子の冗長性(同じ機能の遺伝子の重複度合い)が低い。一方でモデル植物として整備されているゼニゴケはヒメツリガネゴケは、AM菌共生を行わない例外的な植物である。そこで本研究は、AM菌共生を行うコケ植物フタバネゼニゴケをモデルとして、効率の良い遺伝子導入系や標的遺伝子破壊系を確立することを目的としている。本年度はフタバネゼニゴケの遺伝子導入法の改良を行った。形質転換に用いるフタバネゼニゴケの生育ステージや培地、アグロバクテリウムとの共存培養の条件などを検討することで、以前に我々が確立していた方法よりも飛躍的に効率の良い遺伝子導入が可能となった。この方法を用いて、近縁のゼニゴケで明らかになっている生殖成長の切り替えの役割を持つ遺伝子を過剰発現させたところ、これまで全く不可能だった生殖器の誘導が不完全ながらも達成できた。また蛍光タンパク質の発現などにも成功しており、安定な遺伝子導入が確率できたと考えられる。次年度は近縁のモデル植物であるゼニゴケで確立されているCRISPR-CAS9法を用いて、フタバネゼニゴケの共生関連遺伝子の破壊株の作製と、形質の評価を行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的であったフタバネゼニゴケの効率的な遺伝子導入法の確立が達成できたので、概ね順調であると考えている。
今後は多くの植物で成功例が報告されているCRISPR-CAS9を用いて、フタバネゼニゴケの共生関連遺伝子の破壊株を作製して解析を行う予定である。これまでの形質転換法の検討から、世界的に広く普及し始めているゼニゴケ用のベクターがそのままフタバネゼニゴケでも使用できることが判明している。したがってCRISPRにおいても、ゼニゴケで開発されたものを用いる。
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New Phytologist
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
doi: 10.1111/nph.14539
Plant and Cell Physiology
巻: 57 ページ: 2283-2290
DOI: 10.1093/pcp/pcw144