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2016 年度 実施状況報告書

静止中心特異的なリボソーム量制御機構の存在とその機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K07115
研究機関立教大学

研究代表者

堀口 吾朗  立教大学, 理学部, 准教授 (70342847)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードリボソーム / 静止中心 / 細胞周期 / 根端分裂組織
研究実績の概要

本研究では根端分裂組織の静止中心におけるリボソーム量を調節する仕組みの解明を目的としている。リボソームタンパク質のモデルとして、RPL4Dに注目し、それとGFPとの融合タンパク質(RPL4D-GFP)をレポーターとして用いている。35S promtoerで発現させたRPL4D-GFPは静止中心での蛍光が周囲の細胞に比べて非常に弱いことから、なんらかの仕組みでRPL4Dが静止中心特異的に低蓄積になるものと考えられる。この系統を用いて、静止中心の細胞分裂を誘導することが知られている植物ホルモンの処理条件の検討を行った。ただし、この系統は静止中心以外の蛍光が強く、観察には不便な点がある。そこで、より簡便な観察を可能にするため、静止中心特異的に発現するWOX5 promoter下でRPL4D-GFPを発現する系統を作出した。この時、GFP蛍光の変化がWOX5 promoter強度の変化によるのか、RPL4D-GFPの安定性の変化によるものかを区別するため、pWOX5::GUS pWOX5::RPL4D-GFP2重レポーター系統をさらに作成した。
さらに、静止中心においてRPL4D-GFPの蓄積量を制御する因子を探索するため、pWOX5::GUS pWOX5::RPL4D-GFP2重レポーター系統に対しEMS処理を行い、RPL4D-GFP蛍光が強まる突然変異株のスクリーニングを行った。その結果、蛍光強度が強まる変異株候補を数系統見出した。
静止中心特異的にRPL4D-GFPが低蓄積する現象を解析するため、リボソームの合成量を高める手法の検討を行った。OLI2は出芽酵母Nop2ホモログであり、リボソーム生合成因子として働く。OLI2の過剰発現体を作出したところ、植物体の矮化表現型をもたらすことが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究計画では、解析に用いる系統の作出(ほぼ完了)とホルモンや薬剤処理の条件検討を初年度に行い、本年度はその詳細な観察を行う予定であった。しかし、観察に用いる35S::RPL4D-GFP系統をよりも、観察がしやすいpWOX5::RPL4D-GFP pWOX5::GUS系統の作出が順調に進んだので、この系統を用いて観察を行うように予定を変更した。また、この系統を用いて、RPL4D-GFPの蓄積量が増加する突然変異株候補が得られた。一方、RPL4D以外のリボソームタンパク質とGFPの融合タンパク質の作成に関しては、試した限り本来の機能が果たせないものばかりとなった。この点については、引き続きその他のリボソームタンパク質を順次試していく。これとは対照的に、リボソームの蓄積量を静止中心特異的に増加させるため、まずリボソーム生合成関連遺伝子の過剰発現体を作出したところ、OLI2の過剰発現が植物の形態異常をもたらすことが明らかになった。リボソームの生合成因子は数100種類あるため、どの因子が生合成の律速になるか予想ができない。OLI2の過剰発現による表現型からは、リボソーム生合成量が操作できる可能性が示唆される。以上のように、実験に用いる形質転換体の作出状況は、うまくいくものと行かないものがでてしまうが、研究全体の進行に差し障るものではないため、概ね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

最終年度では、pWOX5::RPL4D-GFP pWOX5::GUSを中心に、 RPL4D-GFPの低蓄積をもたらす植物ホルモンや遺伝制御系、タンパク質分解型との関係を詳細に解析する。また、RPL4D-GFPの低蓄積が解除された変異株の探索をさらに進めるとともに、得られている変異株候補の解析を進め、有望な系統に関しては次世代シークエンス解析により原因遺伝子の特定を目指す。また、OLI2過剰発現体の解析を進め、静止中心でリボソームの蓄積量を高めることができるか、できるならば根端分裂組織の構造や機能にどのような効果があるか解析を進める。なお、RPL4D以外のリボソームタンパク質の蓄積量を可視化するためのマーカー系統の作出は、これまでに試していないリボソームタンパク欠損変異株について引き続き試していく。以上の結果を総合して、研究成果のとりまとめと論文発表についても進めていく。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額は約35万円であるが、実験計画の多少のズレにより28年度内に発注を行わなかった試薬と、次世代シークエンス解析にかけられる可能性があるサンプルが得られたため、それが可能であると判断された場合に、速やかに発注できる体制をとったためである。

次年度使用額の使用計画

次年度に入ってすぐに、発注が保留になっていた試薬類の購入にあてる。また、29年度はタンパク質分解阻害剤、植物ホルモン、イムノブロット用試薬、抗体、プラスチック器具、植物栽培用品、オリゴDNA、分子生物学用試薬などの購入に充てる。また、次世代シークエンス解析にかけることが妥当と判断されたサンプルが得られれば、こちらを優先的に執行する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] リボソームの生合成と植物の発生2017

    • 著者名/発表者名
      堀口 吾朗
    • 雑誌名

      生物科学

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 査読あり
  • [学会発表] Four NAC transcription factor genes are involved in rpl4d-induced leaf abaxialization in the as2 mutant of Arabidopsis thaliana2017

    • 著者名/発表者名
      Gorou Horiguchi, Iwai Ohbayashi, Munetaka Sugiyama, Hirokazu Tsukaya
    • 学会等名
      第58回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      鹿児島県鹿児島市鹿児島大学
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-18
  • [学会発表] Transfer RNA wobble U34 modification in plants: Its possible relation to leaf development2017

    • 著者名/発表者名
      Yumi Nakai, Gorou Horiguchi, Akiko Harada, Masato Nakai, Takato Yano
    • 学会等名
      第58回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      鹿児島県鹿児島市鹿児島大学
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-18
  • [学会発表] 植物tRNAのwobble位修飾とロゼッタ葉の形態形成について2016

    • 著者名/発表者名
      中井 由実、堀口 吾朗、原田 朋子、中井 正人、矢野 貴人
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神奈川県横浜市パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] リボソーム生合成関連因子GDP1とOLI2が葉の発生に果たす役割の解析2016

    • 著者名/発表者名
      深田 かなえ、塚谷 裕一、堀口 吾朗
    • 学会等名
      日本植物学会第80回大会
    • 発表場所
      沖縄県宜野湾市沖縄コンベンションセンター
    • 年月日
      2016-09-16 – 2016-09-18
  • [学会発表] Mutations in ribosomal protein genes induce the expression of NAC transcription factor gene, SUZAKU1, and promote leaf abaxialization in asymmetric leaves22016

    • 著者名/発表者名
      Gorou Horiguchi, Mikito Inoue, Hidenori Masuda, Miyuki Nakata, and Hirokazu Tsukaya
    • 学会等名
      The 27th International Conference on Arabidopsis Research
    • 発表場所
      Gyeong Ju, Korea
    • 年月日
      2016-06-29 – 2016-07-03
    • 国際学会
  • [備考] 立教大学理学部生命理学科植物分子発生学研究室ホームページ

    • URL

      http://www2.rikkyo.ac.jp/web/horiguchi/plant/home.html

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公開日: 2018-01-16  

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