研究課題
PED3はペルオキシソーム膜に局在するABCトランスポーターである。種子発芽に伴って、オイルボディに蓄積しているトリアシルグリセロールから切り出された脂肪酸は、PED3によってペルオキシソームへ輸送され、種子発芽に必要なエネルギー源であるスクロースに変換される。この遺伝子が破壊されたped3変異体は種子発芽率が極端に低下する。種子貯蔵脂肪からスクロースを合成できないからである。本研究では、種子発芽における炭素代謝の制御機構に関わる遺伝子の網羅的同定をめざしてped3サプレッサー変異体の単離と分子遺伝学的解析を行った。ped3サプレッサー変異体とは、ped3変異体を再度変異源処理することで発芽率が回復した変異体である。これまでに6系統の変異体を同定し、表現型解析を行った。その中の1系統は発芽に際してデンプンを合成する能力を有することが明らかになった。本変異体はプラスチド型ホリルポリグルタミン酸合成酵素を欠損しており、野生型植物と比較してアデニン量が増加していた。そこで、メトトレキサートや5フルオロウラシルなどの葉酸代謝拮抗剤やアデニンを投与したところ、野生型植物にデンプンの蓄積が誘導されたことから、葉酸によるデンプンの蓄積制御という新しい概念を提唱した。これらの結果は、掲載雑誌のResearch Highlightに選ばれたり、NHK「ガッテン」で取り上げられるなど注目を浴びた。現在は、プラスチドにおける葉酸の作用機作について解析を続けている。他の変異体については、引き続き原因遺伝子の同定などを継続中である。
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http://b-lab.nagahama-i-bio.ac.jp/?page_id=72