研究課題/領域番号 |
15K07118
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
星野 敦 基礎生物学研究所, 多様性生物学研究室, 助教 (80312205)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / 植物 / クロマチン / DNAのメチル化 / アサガオ |
研究実績の概要 |
エピジェネティックな遺伝子発現の変化が刷毛目絞りという模様にあらわれるアサガオの変異体を材料にして、遺伝子の発現状態が世代を越えて遺伝する「経世代エピジェネティック伝達」と、DNAメチル化による遺伝子の抑制機構の解明を試みた。 アサガオの刷毛目絞り変異体は、濃色と淡色の縞模様の花を咲かせる。また、エピジェネティックな変異により模様がない変異型や野生型のような花だけを咲かせる個体(エピ変異体)が現れ、その形質が経世代エピジェネティック伝達する。平成29年度はまず、模様に関わる3GT遺伝子のヒストン修飾を明らかにするために、変異型のようなエピ変異体のChIP-seq(クロマチン免疫沈降シーケンス)で得られた塩基配列を計算機で解析した。ヒストンH4のアセチル化などのヒストン修飾について解析したが、いずれも明瞭な集積領域が検出できず、ChIPの再現性に問題があると思われた。そこで、従来のネイティブChIPからクロスリンクChIPへ方法を変更し、平成28年度までに得られた特定のヒストン修飾の集積領域をポジティブコントロールとすることで再現性の向上を行った。この方法で改めて、野生型のようなエピ変異体、変異型のようなエピ変異体、野生型系統の花弁からクロマチンを抽出し、5種類のヒストン修飾についてChIP-seqを行った。次世代シークエンサーでの配列解析は、先進ゲノム支援の協力を得た。現在、得られた塩基配列の解析を進めている。 ソライロアサガオの刷毛目絞りは、白色地に青い縞模様ができる。原因遺伝子のプロモーター配列が白色細胞で特異的にDNAメチル化を受けることが分かっている。プロモーター配列と転写因子の相互作用をin vitroで解析したところ、DNAメチル化が相互作用を阻害することが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先進ゲノム支援の支援課題に採択されたことで、当初計画よりも高精度で大規模な結果が得られている。DNAメチル化による遺伝子の抑制機構の実体は、プロモーター配列と転写因子の相互作用の阻害であることも明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
アサガオの刷毛目絞りは、ChIP-seqで得られた塩基配列を解析することで、変異型と野生型のような着色とそれぞれ相関があるヒストン修飾を探索する。さらに、ChIP-seqで特定する模様に関わるヒストン修飾について、経世代エピジェネティクスに関連するかどうかをChIP-qPCR法などにより検討する。検討に必要な、世代を更新したエピ変異体の花弁のサンプリングは完了している。ソライロアサガオの刷毛目絞りについては必要な解析がほぼ完了しており、論文等で報告したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28、29年度の先進ゲノム支援の支援課題に採択され、当初計画よりも高精度で大規模な塩基配列解析を行った。この解析に必要な試料調整や配列情報処理に時間を要したことなどから研究期間を延長したため次年度使用額が生じた。平成30年度では、先進ゲノム支援の支援結果を検証して、ヒストン修飾の経世代伝達を解析する。そのための抗体や酵素などを購入する予定である。
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