ヒメツリガネゴケの細胞周期制御因子CDKAによる細胞運命転換の制御機構を明らかにするため、以下の実験を行った。 1. CDKA標的因子の探索:野生型とcdka変異体の切断葉からリン酸化タンパク質濃縮カラムを用いて、リン酸化タンパク質をそれぞれ精製し、質量分析装置で解析した。その結果、野生型ではリン酸化されているが、cdka変異体ではリン酸化されていないタンパク質の中に、ヒストン修飾制御に関わる因子が含まれていることが分かった。また、染色分体の分離を制御する因子や膜輸送に関わる因子も含まれていた。これらのことは、幹細胞化の過程で活性化されたCDKAが、これらの因子をリン酸化することでその機能を活性化させ、ヒストン修飾変化や染色体分配を開始させることが予想された。 一方、並行して行ったCDKAと結合する因子の探索では、タンパク質同士を架橋するクロスリンカーの条件検討を行い、クロスリンカーの一つであるDSSOを用いることで、CDKAと何らかのタンパク質が架橋されていることが分かった。そこで、CDKA-Myc融合タンパク質が発現している切断葉をDSSOでクロスリンクし、Myc抗体を用いて免疫沈降を行なったところ、CDKA-Mycタンパク質を含んだ複合体を得ることができた。 2. CDKAキナーゼ活性を検出するバイオセンサーの開発: CDKA標的タンパク質に存在するCDKAのリン酸化部位を用いることがバイオセンサーの開発に不可欠であるため、上記のCDKAの標的因子の探索に集中した。
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