研究実績の概要 |
哺乳類の精巣は、生殖細胞と体細胞から成るチューブ状の精細管とその外側の間組織から成るが、その形成機構には未だ不明な点が多い。我々は生後マウス精巣を解離・再凝集させ、コラーゲン内3次元培養系にKSR (KnockOut Serum Replacement)を添加することにより確立した精巣再構築系を用いて、精細管の形成機構について、解析することを目的とした。 間質や精細管辺縁に存在するCD34+細胞, p75+細胞, 筋様細胞の再構築に於ける挙動を調べたところ、当初別々の固まりを形成していたが、3日目には3種の細胞群がお互いに混ざり合い、外側から筋様細胞、p75+細胞、CD34+細胞と3層を形成し、一部の細胞は2種類の抗原を同時発現することが観察された。また、p75+細胞、CD34+細胞は3日目にピークを持つ増殖活性を示した。これらの結果は、CD34+細胞->p75+細胞-> 筋様細胞と増殖しつつ分化して行くことを示唆する。また、間質を除去した実験から、管状構造の再構築にはCD34+細胞群が芯となってp75+細胞と筋様細胞を供給し、その周りにセルトリ細胞を配列させることが必要であることを示唆する。 CD34+細胞からp75+細胞を経てa-SMA+筋様細胞へと分化するかどうかを調べるために、CD34抗体を用いた磁気分離法によってCD34細胞を純化し、collagenコートしたカバーグラス上で培養した。その結果、KSRのみの培養では3日でCD34+細胞からp75+細胞、筋様細胞へと分化したが、Alk5iを加えるとCD34+細胞からp75+細胞、筋様細胞への分化を阻害した。これらの結果は、CD34+細胞からp75+細胞、p75+細胞から筋様細胞へと分化すること、その分化をAlk5iが直接阻害することを証明した。
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