研究実績の概要 |
マウス視床下部における新生仔期の性ホルモン投与の作用メカニズムを理解するために、出生直後に合成エストロゲンを投与された5日齢の雌マウス視床下部の網羅的な遺伝子発現変化を解析し、無処理マウスと比較した。その結果、成熟マウスへの投与(Yang et al., 2017)や出生日の単回投与(Sakakibara et al., 2013)の結果とは全く異なり、多くのGタンパク共役型受容体 (GPR) 経路に関わる遺伝子群の発現量が変動していた。また、いくつかの転写因子の発現量が変化していたが、Kiss1遺伝子の発現は変化していなかった。新生仔期メスマウス視床下部において、性ホルモン投与直後に発現が変化した遺伝子のなかに、無排卵など成熟後の変化に関与するものが含まれていると考えられる。 一方、マウス視床下部弓状核では、キスペプチンニューロン細胞体がニューロキニンBおよびダイノルフィンを共発現しており、これらの神経ペプチドがGnRHのパルス発生機構に関与していると考えられている。出生直後の性ホルモン投与によるこれらの神経ペプチドに対する影響を調べるため、3ヶ月齢の正常メスマウスを用いて、パラフィン切片を用いたエストロゲン受容体アルファおよびニューロキニンBの免疫組織化学染色法を確立し、視床下部弓状核においてエストロゲン受容体アルファおよびニューロキニンBの陽性細胞を確認した。 また、キスペプチン抗体が製造元のトラブルのため入手できない状態が続いているため、キスペプチン遺伝子プロモーター下流にGFPを導入した遺伝子改変マウスの作製を行った。
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