研究課題
本研究では、オオヒメグモ初期胚のシンプルな表層上皮組織で起こる、形態形成場の伸長成長と縞パターン形成をモデル現象として捉え、細胞運動と遺伝子発現制御をつなぐ細胞・分子メカニズムの解明とその基本原理の追究を行ってきた。細胞をラベルし、追跡する解析からステージ5の胚のおおよその予定運命地図を作成し、その解析と遺伝子発現解析を組み合わせることで、細胞集団に対して縞パターンを形成する遺伝子発現が動的に振る舞っていることを明らかにした。さらに2時間をおきに固定した兄弟胚を用いた定量的解析により、体の3つの領域によって異なる縞パターン形成プロセスを再構成し、胚長及び領域長の増加速度や、後体部で起こる遺伝子発現振動の周期、頭部で連続して起こる縞パターン分裂の時間間隔を概算することができた。さらに、アルマジロ遺伝子を標的とした二本鎖RNAを割球に注入して、アルマジロノックダウン (KD) 細胞クローンが様々な領域に配置した胚を作り、その影響を調べたところ、予定頭部領域に配置したケースにおいてほぼすべてで、ヘッジホッグの遺伝子発現波の伝播と分裂がそのアルマジロKD細胞クローンによって妨げられた。詳細な解析により、進行波として振る舞うヘッジホッグの発現はアルマジロKD細胞クローンと交わることはできるが、交わってすぐの細胞で一切の動的挙動が失われていることが考えられた。頭部領域に導入されたアルマジロKD細胞ではオルソデンティクル遺伝子の発現が抑制されていた。以前に私たちは、オルソデンティクルがヘッジホッグの発現を促進し、オッドペアードが分裂を促進することを示しているが、本研究課題の成果により、その動態制御のメカニズムにアルマジロの機能を組み込んだモデルを提案することができた。
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Development Genes and Evolution
巻: 印刷中 ページ: -
10.1007/s00427-019-00631-x
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