研究課題
メラニン凝集ホルモン (melanin-concentrating hormone; MCH)神経系を特異的かつ後天的に脱落可能な遺伝子改変マウスを用いてMCH神経系がノンレム睡眠調節機能の正常な維持に重要であることを見出した。MCH神経細胞体が存在する視床下部外側野は摂食調節においても重要な領域とされている。絶食条件においてMCH前駆体のmRNA発現量が増加すること、同条件においてMCH前駆体のノックアウトマウスではレム睡眠量が低下することが報告されていることから、エネルギー状態をMCH神経系が感知し、睡眠量を制御している可能性が考えられた。そこで本年度は、MCH神経脱落マウスにおいて絶食処置が睡眠量に及ぼす影響を調べた。24時間絶食処置中の睡眠量を測定したところ、対照群では絶食処置を与えることによって基準期に比べ24時間あたりのNREM睡眠量の有意な増加および覚醒量の有意な減少が見られた。MCH神経脱落群においても同様に、絶食期には基準期に比べ有意なNREM睡眠量の増加および覚醒量の減少が見られた。しかしながら、MCH神経脱落群において基準期に見られていたNREM睡眠量の有意な減少が絶食期では認められなかった。覚醒量についても同様であった。REM睡眠量についてはMCH神経脱落群、対照群ともにそれぞれの基準期と絶食期の間に有意な差は認められなかった。このことから、絶食時においてはNREM睡眠誘導あるいは覚醒量の減少に関わる様々な神経が活動していると考えられるが、MCH神経は今回の絶食条件においては関与しないことが考えられた。
2: おおむね順調に進展している
今回は暗期開始直後から24時間の絶食処置を行ったが、この条件においては、MCH神経脱落マウスにおいて自由摂食時に認められていたNREM睡眠量の低下を認める事が出来なかった。視床下部外側野に起始核を持つMCH神経系はエネルギー状態に応じて睡眠量を制御している可能性が考えられるため、今度は絶食処置解除後の再給餌期における睡眠量の変化について調べる予定である。
絶食処置におけるマウスのストレスを最小限にすること、再給餌期の睡眠の応答を明期と暗期の両方で評価することが出来るように実験条件を改良する。具体的には、1)絶食開始12時間前に餌を4g(24時間の平均摂食量に該当する)入れた新しい測定用ケージにマウスを入れ、絶食処置はこのケージから餌の残渣を取り除くことで開始する。2)睡眠測定は同日の7:00(明期開始直後)にケージ交換し、19:00(暗期開始直後)から24時間測定した基準期、24時間の絶食期、絶食後24時間の再給餌期において連続して行う。再給餌直後の睡眠量を明期においても確認するため、絶食を開始した翌日7:00に再給餌した後の睡眠測定も行う。
年度末期に購入を予定していた試薬が在庫切れのために入手できなかったため。
新年度になり、購入手続きを既に済ませている。
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Sleep
巻: 39 ページ: 369-377
10.5665/sleep.5446.
睡眠医療
巻: 10 ページ: 27-33