研究課題
申請者らは、視床下部外側野を起点とするメラニン凝集ホルモン(melanin-concentrating hormone; MCH)神経系を特異的かつ後天的に脱落可能な遺伝子改変マウスを用いて、MCH神経系がノンレム睡眠調節機能の正常な維持に重要であることを見出した。この結果を踏まえ、今年度は以下の結果を得た。1)MCH神経系はエネルギー代謝と睡眠の両方を調節する事が知られている。MCH神経系の恒常性維持における役割を明らかにすることを目的として、以下の実験条件おける睡眠の量的・質的差異をMCH神経脱落群とMCH神経非脱落群(対照群)マウスで比較した。・1晩絶食後の再給餌期(摂食欲求を高めた状態)・6時間断眠後のリバウンド睡眠期(睡眠欲求を高めた状態)その結果、今回実施した条件においてMCH神経系はノンレム睡眠、レム睡眠の恒常性維持機構のどの側面(開始、安定性、質)にも関与していないことが明らかとなった。2)MCH神経系の主要投射部位には記憶中枢である海馬が含まれること、睡眠と記憶には強い関わりがあることから、MCH神経系は海馬依存性の空間認知記憶に対しても影響を与えている可能性がある。そこでまず、新規物体認知試験により記憶能力を評価したところ、MCH神経脱落群が70.7%と対照群の60.7%に対して有意に高い値を得た。この結果は、MCH神経系が、空間認知記憶を負に制御する役割を持っている可能性を示唆する。今後は空間認知機能を評価する行動試験を複数行うことでMCH神経と記憶制御の関係を調べる予定である。
2: おおむね順調に進展している
MCH神経系は、今回調べた実験条件においてはノンレム睡眠、レム睡眠の恒常性維持機構のどの側面(開始、安定性、質)にも関与していないことが明らかとなった。一方でMCH神経系が、空間認知記憶を負に制御する役割を持っている可能性を示す事が出来た。今後は、MCH神経と記憶制御の関係を行動学実験にて明からかにする予定である。
MCH神経脱落に伴う記憶能力の変化を調べるために、新規物体認知試験に加えて、文脈的恐怖条件付け試験を行う。MCH神経脱落に伴う不安様行動を調べるために、オープンフィールド試験と高架式十字迷路試験を行う。
これまで使用してきた分光光度計が突然故障して使用不能となった。分光光度計は試薬の調製や資料の分析定量に欠かせない生化学的分析機器である。当該研究計画を予定通り遂行するために、90万円の前倒し請求を行い、代替機を購入した。
次年度研究計画に計上していた物品費40万円は確保してあるので、予定通り研究計画は実施できる。次年度研究計画のうち、旅費と人件費・謝金を見直す。国際学会出張旅費は所属大学の渡航費補助財源を切り替える。学生に委託していた作業については全て自分で実施する事により,人件費・謝金を削減し、研究計画の進捗には影響を与えないように配慮する。
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Obes Res Clin Prac
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1016/j.orcp.2016.12.006
Genes Cells
函館病院薬剤師会報
巻: 34 ページ: 9-13