研究実績の概要 |
(1)非横紋筋細胞におけるトロポニンの新たな機能的役割の解明: ①半索動物の非横紋筋運動細胞におけるトロポニン(TN)の探索と筋収縮制御機構の解明:ミサキギボシムシ体幹の筋組織(平滑筋)から天然アクチン繊維の単離を行い、TNが存在しないことを示した。一方、100kDタンパク質が半索動物のパラミオシンであることを明らかにした。これらのことから、脊索動物の筋肉はTNを発現するがパラミオシンは発現しない一方、同じ新口動物でも水腔動物の筋肉はパラミオシンを発現するがTNは発現しないことが明らかとなり、新口動物の進化に伴う筋の構造と機能の多様性に関して新たな知見が得られた。 ②扁形動物の非横紋筋運動細胞におけるトロポニンの機能の解析:ゲノム情報にもとづき、プラナリアのTN3成分(TnT, TnI, TnC)と考えられる遺伝子候補を同定した。組み換え体と抗体を作製し、これら産物すべてが筋肉で発現し、アクチン線維と共局在していることを明らかにした。また、in vitroで組み換え体TnCがCaイオンに結合、TnTとTnIがウサギアクチンに結合することが示され、新たに、非横紋筋細胞のプラナリア筋肉においてもTNと考えられるタンパク質が発現し機能することが示唆された。 (2)横紋筋収縮制御におけるミオシン結合タンパク質の役割の解明:C-タンパク質N端側領域のlinker配列がアクチン線維との結合・束化に重要であることを明らかにした。その活性はアイソフォームごとに異なり速筋型が最も強く、次いで心筋型、遅筋型であることがわかった。さらに束化の機序が二量体形成によることが示された。H-タンパク質もアクチン線維に結合し束化することが示され、従来、単純にミオシン結合タンパク質として考えられていた両分子がアクチン-ミオシン相互作用の調節を介して筋収縮制御に関わる多機能タンパク質であることが強く示唆された。
|