研究課題/領域番号 |
15K07146
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
樫森 与志喜 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (70233707)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 神経科学 / 電気感覚システム / 数理モデル / 大規模並列計算 / 情報処理機構 |
研究実績の概要 |
本研究は、H27年度の後期の追加採択(11月)の課題であり、研究の実働期間は約4か月である。先ず、本年度の計画に沿って電気魚の周囲に形成される電場を有限要素法により計算する数理モデルの作成とGPGPU計算手法の開発(GPGPU計算は画像処理の汎用計算を意味する)の準備を行った。GPU計算に関しては、まず、GPU計算用のマシンを調整しこの環境下で科学技術計算に多く用いられているCUDAによる統合開発環境を導入した。その上で、GPU計算の能力を評価するため、大規模なサイズ(2の8乗から2の20乗)の受容器や神経ネットワークモデルを用いてGPU計算と通常の並列計算、逐次計算に対してベンチマークテストを行った。結果、以下のことが分かった。 1.対象の系が大きくなるほどGPU計算の高速化効果が大きくなる。2.コア数を多くするより高クロック数のCPUを使う方がGPU計算速度に大きな影響を与えることができる。 3.CPUを複数使用する場合、メモリ上のデータ配置とCPUの近さが計算速度の大きく影響する。4.目的とするアーキテクチャと計算の種類によって最適な手段を選択する必要がある。これらの成果は、ニューロコンピューティング研究会(2016, 3月、東京)にて発表され、信学技報に掲載された。 また、電場計算の数理モデル作成に関しては、有限要素法の手法を任意の形を持つ物体の計算に拡張する新しいメッシュ分割法を定式化した。また、解を求めるにあたって従来の収束法ではなく連立方程式を利用する方法についても定式化した。 以上の計算の設定と実行に関しては、連携研究者の藤田一寿氏(津山高専、講師)によるものである。また、GPUの予備計算は大学院生(2名)によってなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は順調に進んでいる。GPU計算システムについては、計算機システムの構築、GPU計算と他の計算法との比較によりGPU計算の特徴を整理し、今後の電場、受容器、神経系の計算システム構築の基礎データを得ることができた。電場計算については、高い精度が必要となるので、現在のテスラボード搭載の計算機でGPU計算を遂行するのが効果的である。受容器や神経系の計算は、高クロック数のCPUとグラフィックボードを組み合わせた計算を行う。
また、電場計算の数理モデル構築についても、任意の物体の形に依存した新しいメッシュの分割法を考えだした、さらに、有限要素法の解法として大規模な連立方程式によって解を求める手法を定式化した。これで電場計算の準備事項を終了したので、現在は、このモデルに沿ったGPU計算プログラムを作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、先ず、現在取り組んでいる魚の周囲に形成される電場のGPU計算を行い、周囲に存在する物体の大きさ、距離、形の特徴が魚の体表面に分布した電場変化のどのような時空間特徴に反映されるかを研究する。成果については、日本神経科学会(9月、横浜)、国際会議(2件;ICONIP2016(第26回神経情報処理国際会議(10月、京都))、北米神経科学学会(11月、アメリカ)で発表予定である。
また並行して受容器やその上位核である電気感覚側線葉の神経ネットワークの予備計算を進める。これらの系に対して電場計算同様、GPU計算と他の計算法のベンチマークテストを行いどのような計算システムを組むのが最適であるかを調べる。その後、電場計算の成果と合わせて、受容器や神経システムでの物体の距離、大きさ、形等の情報コーディングについて研究する。この成果についてもニューロコンピューティング研究会(11月)での発表を予定している。
電場計算の実行は主に連携研究者の藤田一寿氏(津山高専、講師)が行う。一方、神経系の計算は、藤田氏に加え、大学院生(1名)を中心に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
連携研究者との研究打ち合わせに計上した予算が6万程度残額が生じた。これは、打ち合わせを3回見込んでいたが、研究の進捗状況により2回になったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
残額については研究の進捗状況に合わせて次年度の研究打ち合わせの旅費として使用する予定である。
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