研究実績の概要 |
H28年度は、研究計画に沿って、次の問題に取り組み以下のような成果を得た。
1.GPU計算能力の評価:大規模な神経ネットワークのシミュレーションを進める準備段階として大きなサイズ(ニューロン数が~2の20乗の系)で、現在神経モデルで主に使用されている4種類のニューロンモデルを使用し、single core, Open MP, GPGPU(CUDA)計算についてその計算時間、精度について評価した。その結果、CUDA計算はOpen MPより十倍程度計算時間が短くなり、特にニューロン数が大きいところではその差が顕著になる。また、CUDAによる単精度計算の可能性についても検討した。これらの成果は、ニューロコンピューティング研究会(2016, 11月)で発表され、信学技報に掲載された。 2.電場計算による物体形状の指標について:弱電気魚の周囲の電場計算に対して有限要素法に基づくモデルを提案し、物体の形が円、四角形、三角形の場合にどのような電場歪みが生じるかを調べた。その結果、電気感覚の視界、ひずみの位置、回転角に対する歪みの依存性について重要な知見を得た。この成果は、ICONIP 2016(第26回国際神経回路網国際会議、京都10月, 2016)にて発表し、国際会議プロシーディングス(Lecture Notes in Computer Science)に掲載された。また、北米神経科学学会(2016, 11, San Diego, USA), 日本神経科学学会(JNS2016, 7月横浜)にて発表された。 計算の実行にあたっては、連携研究者の藤田一寿氏(津山高専、講師)、大学院生(1名)のサポートによるものである。
|
今後の研究の推進方策 |
H29年度は、前年度に見出した物体形状の電場歪みの指標(最大振幅、半値幅)についてこれを神経システムでコーディングするメカニズムを調べる。魚の体表面に受容器を配置し、電場歪みの入力に対して受容器応答を計算し、受容器で形の情報がどのようにコードされているかを調べる。CUDAの単精度計算が計算時間御の効率化に有効である。成果は、第40回日本神経科学会(JNS2017, 7月、千葉)にて発表予定である。 さらに受容器の上位核である電気感覚側腺葉(ELL)で形の情報がどのようにコードされているかについても数理モデルを作成し研究する。この成果については、ICONIP 2017(第24回神経回路網国際会議, 11月、中国)にて発表予定である。
これらの計算の実行には、連携研究者の藤田一寿氏(津山高専、講師)、大学院生(1名)の協力のもと遂行する。
|