研究実績の概要 |
本研究は、進化的に特異な位置を占めるペプチド作動性チャネルの構造と機能を解明するために、チャネルの細胞外ドメイン内に存在する空間がチャネルのゲート機構とイオン透過性におよぼす影響を明かにすることを目的としている。 平成27年度は、軟体動物アメフラシのFMRFamide作動性Na+チャネル(AkFaNaC)の細胞外ドメイン内空間の底部に存在する552位、および556位のアスパラギン酸が作る陰性リング構造がチャネル機能におよぼす影響を検討するために、552位、556位変異体チャネル、および両者の二重変異体チャネルの機能とそのCa2+依存性を解析した。その結果、細胞外Ca2+が552、556位のアスパラギン酸と相互作用することでチャネル機能を制御することが明らかになった。 平成28年度は、これまでの実験データを説明出来るチャネルの状態モデルのシミュレーション実験を行い、10状態のアロステリックモデルにより実験結果の多くが説明出来ることが明らかになった。また、これらの成果をまとめた論文を作製し投稿した。さらに、FaNaCの細胞外ドメイン構造に存在する7ヶ所のSS結合を個別に切断する変異体の作製実験に着手した。 平成29年度は、前年度に開始したFaNaCの細胞外ドメインに存在するSS結合の機能的意味合いを検証する研究を継続した。また、FaNaCに構造が類似するラットの酸感受性チャネル3(rASIC3)において、AkFaNaCの552, 556位に相当する部位に変異導入したチャネルを作製し機能解析を行った。なお、前年度に投稿したAkFaNaCのCa2+感受性と552、556位アスパラギン酸の関係に関する論文は、軽微な修正の後に受理された。
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