研究課題/領域番号 |
15K07157
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 優子 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70435882)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / ライブイメージング / 胚性ゲノム活性化 / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
本研究は、ゼブラフィッシュ発生過程における転写活性化を、活性型(Ser2リン酸化型)RNAポリメラーゼ2に対する抗原結合断片を用いて可視化し、それに伴うヒストンの翻訳後修飾の変動を計測することで、転写活性化におけるヒストン修飾の意義を明らかにすることを目的としている。 平成29年度は、胚ゲノム活性化に伴うヒストンH3K27アセチル化の上昇が、転写活性化を促進するかどうか調べるため、アセチル化レベルを増減させる処理を行った。しかしヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(トリコスタチンA)やアセチル化酵素阻害剤(C646)を添加しても、初期発生過程のアセチル化レベルに大きな変化は見られなかった。添加濃度や使用する薬剤について更なる検討が必要であると考えられる。一方で、アセチル化ヒストン結合タンパク質I-BETファミリーの阻害剤であるJQ-1を添加した場合、転写活性化が抑制された。I-BETファミリーはアセチル化ヒストンに結合し、転写装置の呼び込み、クロマチンリモデリング、アセチル化の亢進などを行うことが分かっている。したがって、胚ゲノム活性化に伴うヒストンH3K27アセチル化の上昇は、I-BETファミリー因子の作用を介して転写活性化を促進する可能性が示唆された。 また、Fab-based Live Endogenous Modification Labeling (FabLEM)法によるライブ観察で得られたこれまでの結果を検証するため、初期胚を固定して免疫染色を行った。胚ゲノム活性化に先立って観察された、活性型ポリメラーゼの集積部位(foci)には、H3K27アセチル化が濃縮されていることが分かった。 今後は、活性型ポリメラーゼの集積部位(foci)が、どのようなゲノム構造なのか明らかにしていきたいと考えている。まずは転写産物の検出を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胚性ゲノム活性化に伴うヒストン修飾の重要性について、おおむね順調に解析が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
活性型ポリメラーゼの核内集積部位で、どのような遺伝子が転写されているのか調べるため、一分子RNA FISHを行う予定である。また、ゲノム構造についても明らかにしていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の当初計画では、胚性ゲノム活性化におけるヒストン修飾の重要性を明らかにするため、酵素に対する阻害剤とともに、モルフォリノの使用を検討していたが、アセチル化ヒストン結合因子に対する阻害剤JQ-1の添加で、転写活性化の明らかな減弱が見られ、方針を変更したため。平成30年度分として請求した助成金は、JQ-1添加による転写活性化への影響について再現性の検証実験のための消耗品等の購入に充てる予定である。
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