研究課題/領域番号 |
15K07159
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中越 英樹 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (50314662)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 妊性 / 精液 / 栄養シグナル |
研究実績の概要 |
キイロショウジョウバエのオス附属腺はヒトの精嚢や前立腺に相当する器官であり,2種類の上皮細胞 (主細胞と第二細胞) から成る.交尾によってメス生殖器内に移行した附属腺タンパク質 (Accessory gland proteins: Acps) は,メス交尾後応答 (産卵の促進,交尾拒否行動など) を引き起こすことで,交尾オスの子孫を残しやすくしている.オスが多くの子孫を残すためには,多くの Acps を分泌できる大きな附属腺が必要となるが,多量の Acps を作り続けるには多くのエネルギーを消費する.良好な栄養環境下では,オスからメスへの求愛行動が活発になることが知られているため,発生期の栄養環境が附属腺機能 (オスの妊性) を変化させる可能性について検討を行った. 低栄養のエサから生まれた個体では,附属腺主細胞の全体的な縮小に加えて一部の第二細胞が顕著に縮小していたことから,栄養環境によって附属腺の細胞形態が変化することが明らかとなった.栄養環境の変化が附属腺細胞に及ぼす影響についてより詳しく調べるため,栄養シグナル経路の構成因子であるインスリン受容体 (Insulin Receptor; InR) の機能獲得型タンパク質,InR と TOR (Target of rapamycin) の優性阻害型タンパク質を附属腺細胞で発現させた.その結果,InR 機能獲得型個体では附属腺及び第二細胞が肥大し,第二細胞数も顕著に増加していた.一方で,TOR と InR の優性阻害型個体では第二細胞が縮小していた.さらに,第二細胞の縮小が顕著であった TOR 優性阻害型個体では,妊性も低下していることが分かった. 本研究により,ショウジョウバエのオス附属腺細胞は栄養環境に応じて細胞数や細胞形態を変化させることで,妊性を制御していることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ショウジョウバエのオス附属腺細胞 (主に第二細胞) が,栄養環境に応じて細胞数や細胞形態を変化させることで,妊性を制御していることを明確に示すことができた..
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今後の研究の推進方策 |
附属腺第二細胞の解析を継続しつつ,主細胞の栄養環境応答について解析を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画より少ない物品費で実施できたため,17,459円の未使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として使用予定.
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