転写因子NF-Yを構成する3つのサブユニットの中でDNA結合サブユニットであるdNF-YAをノックダウンした3令幼虫を用いたRNA-seq解析により脂質代謝に関連する多くの遺伝子がNF-Yの制御を受けていることが示唆されている(未発表)。本研究では転写因子dNF-Yが脂質代謝に関わる機構をショウジョウバエ脂肪体を用いて研究する。脂肪体は哺乳動物における肝臓に相当する器官であるといわれていることから、脂肪体における脂質代謝関連遺伝子に関する研究は昆虫を用いた新規肝機能解析のモデルとしての可能性を持つ。 dNF-YAと遺伝的な相互作用が見られた遺伝子群のうち、Lipaseの一つであるLipase4 (Lip4)遺伝子の上流域にはNF-Yが結合するコンセンサス配列(YYRRCCAATCAG)が存在している。ルシフェラーゼトランジェントアッセイ(Lucアッセイ)において、このコンセンサス配列にNF-Yが結合できなくなるように変異を導入すると転写活性が上昇することを見出している。また、ショウジョウバエ培養細胞であるS2細胞を用いた抗dNF-YA抗体によるクロマチン免疫沈降でNF-Yコンセンサスを含む転写開始点近辺においてはNF-Yコンセンサスを持たない領域と比べてLip4遺伝子上流域にdNF-YA結合していることを示す6倍もの強い増幅が見られた。また、個体レベルではdNF-YAをノックダウンし、Nile-Red染色法で蓄積されている脂質を検出したところ、3令幼虫の脂肪体では蓄積されている脂質の量が劇的に減少していることがわかった。上記の実験結果に加え、内在性のLip4遺伝子のmRNA量の変化を示すqRT-PCRの結果を精査し、追加した上で学術論文の投稿を準備中である。
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