研究課題/領域番号 |
15K07163
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
大竹 愛 (四宮愛) 基礎生物学研究所, 季節生物学研究部門, 特任助教 (60452067)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 光周性 / 季節繁殖 / メダカ / 地理的変異 / 卵巣 |
研究実績の概要 |
生物は日長の変化を手がかりにして季節を感知することが知られている。近年の鳥類や哺乳類の研究から、日長情報の脳内情報伝達経路が明らかにされてきたが、「日長を測定するしくみ」そのものの解明は主要な問題として残されている。これまでに研究代表者は、緯度の異なる地点に由来する多数のメダカ野生系統を用いて日照時間と生殖腺発達の関係を解析し、「非繁殖期から繁殖期への移行に必要な日長(臨界日長)の長さ」、および「短日処理に応答した繁殖期から非繁殖期への移行」、に地理的変異があることを見出した。これらの日長応答の違いは、日長の季節変化の感知(日長測時)に関わる遺伝子の変異に起因すると予想された。本研究は、メダカの日長応答の地理的変異を利用して、季節繁殖を司る日長測時の分子機構を順遺伝学的手法により解明することを目的としている。 平成27年度は、 繁殖期への移行に必要な臨界日長が異なる系統(「明期12.5時間型」と「明期13.5時間型」)、および、短日処理による繁殖停止の応答(短日応答)が異なる系統(「応答型」と「不応答型」)を用いて交配をおこなった。それぞれの交配から得られたF2世代を用い、1.日長測時遺伝子の遺伝様式を調べ、2.量的形質遺伝子座(quantitative trait loci: QTL) 解析をおこなった。その結果、有意水準1%のLOD値を超えるQTLsを同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度は、当初の予定であった日長測時遺伝子の遺伝様式の解明(実験1)を遂行し、量的形質遺伝子座(quantitative trait loci: QTL) 解析(実験2)に発展させることができた。 実験1) 日長測時遺伝子の遺伝様式の解明:これまでに研究代表者は、メダカの系統に、(1)繁殖期へ移行する臨界日長について「明期12.5時間型」と「明期13.5時間型」があること、また(2)短日処理による繁殖停止について「応答型」と「不応答型」があることを見出した。日長測時と密接に関わると考えられるこれらの形質について、親系統、およびF1世代、F2世代を用いた表現型解析をおこなったところ、遺伝要因によるものであることが確認され、複数の遺伝子座が関与していることが示唆された。生殖腺の季節応答は、雄よりも雌の方が顕著であるため、解析には雌のみを用いた。 実験2)QTL解析:親世代、F1世代、全てのF2 世代のDNAをサンプルとして、RAD-Seq (Restriction Site Associated DNA Sequence)法 (Baird et al., PLoS One 2008; Peterson et al., PLos One 2012)を用いた、Illumina Hiseq2500によるシークエンス解析を実施し、親に用いた系統間の一塩基多型(SNPs)を検出した。それらのSNPsについて、F2 世代のジェノタイピング結果を取得した。R/qtlソフトウェア (Broman et al., Bioinformatics 2003)によるQTL解析をおこなった。その結果、(1)臨界日長、(2)短日応答、のどちらにおいてもQTLsが同定された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成27年度のQTL解析の結果を踏まえ、同定したQTLs周辺に存在する遺伝子をゲノム情報から抽出する。それらの遺伝子について、多型解析および発現解析により、候補遺伝子を絞り込む。 1.多型解析:各候補遺伝子について、交配に用いた親系統におけるアミノ酸配列の変異を明らかにする。さらに、各地の系統を用いておこなったこれまでの表現型解析の結果から、表現型と遺伝子多型の関係を明らかにする。2.発現解析:各候補遺伝子の発現部位、発現細胞をin situ hybridization法により明らかにし、発現部位における発現動態をreal time RT-PCR法により明らかにする。さらに、これまでに共同研究で得られているトランスクリプトーム解析のデータから脳内での発現パターンを解析する。以上より、候補遺伝子を絞り込む。 次に、3.候補遺伝子の機能阻害実験および機能獲得実験の結果から、日長測時遺伝子を同定する。機能阻害実験:候補遺伝子の機能喪失型突然変異体をCRISPR/Cas9システムにより作出し、それらの突然変異体について、生殖腺発達の日長応答、また日長応答に関連する遺伝子の発現動態を解析する。機能獲得実験:親系統のFosmidライブラリーから候補遺伝子を含むクローンを単離し、異なる日長応答をもつ系統に遺伝子導入する。それらのトランスジェニック系統を機能喪失型突然変異体と同様に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の助成金は年度内に全て使用し会計処理は済んでいる状況であるが、会計システムの手続き上、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品の納品は既に済んでいる状況であるので、それらの支払いに充当する。
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